北陸新幹線「米原ルート」 実は“料金”も小浜ルートより安かった! 所要時間以上の衝撃事実をご存じか
25年工期の大疑問
北陸新幹線小浜ルート反対の声が日に日に増している。25年もの工期と3.9~5兆円越えを前に、国土交通省資料にある沿線知事たちのコメントも、辛うじて小浜ルート推進を前提にしながらも、工期と費用面、便益面での慎重な検証を求める厳しいものが多くなってきた印象だ。
前回の記事(「北陸新幹線「米原ルート」 所要時間を計算したら「小浜ルート」よりも速かった!」2024年8月31日配信)で、筆者(北村幸太郎、鉄道ジャーナリスト)は2016年の国による金沢~新大阪間の所要時間の試算で、米原ルートは米原駅乗り換え前提で1時間41分との試算に疑義を示した。
そして、米原ルートでも新大阪~鳥飼車両基地間10kmのみ複々線化などさまざまな工夫により、ほぼ現行通りの東海道新幹線ダイヤのまま新大阪乗り入れを果たし、小浜ルートよりも1分速い1時間20分にできることを明らかにした(訂正:筆者による米原ルート案は1時間20分としていたが、正しくは1時間19分で、政府による小浜ルート試算も正しくは1時間20分であったが、それよりも1分速い)。いかに米原ルートが不利に見えるように数字が盛られていたかがおわかりいただけたのではないか。
この記事を踏まえ、日本維新の会の馬場代表からは
「貴重な、しかもわれわれ素人では知り得ない情報を有り難うございました。この間、石川県に出張した帰り台風の影響で大阪方面からたくさんの方々が北陸新幹線を利用されダイヤがメチャクチャになった上に列車内も戦後か?と思うほどすし詰めでした。とにかく北陸新幹線は1日でも早くしかもできるだけ安価で新大阪につなぐ事が重要です」
とのコメントをいただいた。また、東京大学名誉教授の曽根悟氏からは評価できる部分とそうでない部分のご見解をいただいた。
「北村案で高く評価できるのは(1)鳥飼~新大阪間の複々線化案、(2)レベルの低い運行管理システムを前提にしてはいけないとしたことの2点であり、逆に本質論に基づかない所要時間の計算によるタイトルはほぼナンセンスです。米原-京都間は300X(高速度試験車)ではATC信号が420の区間でもあり、速く走りたい区間です。一方の整備新幹線は山陽新幹線と同様の設備で基本的には300km/h走行の準備はされていながら、現実には240km/h程度で走ればよいつもりの区間なので、この前提での比較自体がナンセンスです」
としており、さらに複々線起点の鳥飼付近、米原駅構内、敦賀駅の分岐器の使い方の点では、160km/hで通過を前提とした北村案でも明らかに不十分とのご見解であった。要はさらなるスピードアップの可能性も検討できるとのことで、この点については追って300km/hでの走行や分岐器通過速度のさらなる向上を検討の上、筆を改めたいと思う。
米原ルートでも小浜ルートとほぼ同じ所要時間にできるのに、米原ルートの所要時間が盛られて米原ルートの倍額以上の国民負担と、工期も15~20年余計に待たされる機会損失だけでもおなかいっぱいな話だが、盛られていたのはなんと所要時間面だけではなかった。
料金面でも2016年時点の国の試算では、新大阪~金沢間で小浜ルートは8740円に対し、米原ルートは1万1190円と、2450円も高いという試算を出していた。これは現行の旅客営業規則や鉄道事業免許のあり方を無視した「盛りに盛った富士山盛りの数字」で、小浜ルートの方がはるかに安く見せる「印象操作」が行われていることが明らかとなった。今回、筆者試算により小浜ルートも米原ルートも料金は変わらないことをお示ししたい。