長崎・熊本・鹿児島の「この場所」に、なぜ橋を作らないのか?

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「三県架橋」構想は、天草の交通アクセスを劇的に改善し、経済活動を促進する鍵となる。歴史的文化が根付く天草市は、漁業や商業が活発だが交通の不便さが課題。橋の建設により、観光客の増加や地元産品の流通が期待され、地域経済のさらなる発展が見込まれる。

天草五橋の光と影

リゾラテラス天草。2020年撮影(画像:碓井益男)
リゾラテラス天草。2020年撮影(画像:碓井益男)

 長くなったが、ここからが本稿の本題だ。

 住民の悲願だった架橋により、天草の経済は好転したが、次第に弊害も目立つようになった。最大の問題は人口の流出だ。天草五橋が開通した当時、20万人を超える人口があったが、現在は11万人台まで減少している。また、島内での格差が広がる現象も深刻化している。天草五橋の開通から50年を迎えた2016年、地元紙『熊本日日新聞』は次のように論じた。

「五橋開通で大きく変わった島の経済圏。それまで天草上島の姫戸や倉岳、離島の御所浦などでは、海路で対岸の八代市へ買い物に行く人が多かった。下島の苓北や牛深はそれぞれ長崎、鹿児島両県とつながりが深かった。だが、天草が陸続きになったことで、旧本渡市は交通や物流、経済、政治などさまざまな面で、名実ともに天草の中心地となった」

 この変化は、平成の大合併後にさらに顕著になっている。たとえば、単独市制を施行していた牛深は完全に衰退しており、市街地にあった商業施設も姿を消した。多くの住民は休日に自動車で1時間ほどかけて、イオン天草店まで買い物に出かけるようになった。

 天草市役所がある中心地・本渡は繁栄しているとはいえない。島内交通の中心であるバスセンターもあり、人の流れはあるものの、観光客の姿は少ない。

 2022年の熊本県の観光統計によると、天草地域全体の延べ入込客数は287万5614人に達した。しかし、内訳を見ると、上天草市が152万2035人と全体の過半数を占めている。つまり、架橋が実現したものの、

「本土に近い上天草市がほぼ独占的に観光客を集める構図」

ができているのだ。上天草市の観光の象徴ともいえるのが、三角港の対岸に位置する「リゾラテラス天草」で、休日には熊本県内から家族連れやカップルが訪れる人気の観光スポットとなっている。一方、天草市にはこれほどの集客力を持つ施設が整備されていない。

 この理由は、橋があってもなお遠いことにある。熊本市中心部から天草市中心部へのアクセスは決して容易ではない。産交バスの快速あまくさ号を例にとると、熊本桜町バスターミナルを朝7時55分に出発し、合津には9時41分に到着、天草市の中心である本渡バスセンターには10時32分に到着する。

 つまり、熊本市から天草市の中心部まで2時間37分もかかるのだ。上天草市は熊本市から日帰り圏内という利点を活かして成功しているが、本渡はそれが難しい。牛深などになると、さらにアクセスは困難になるだろう。

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