BEV・FCVだけが本当に「脱炭素の切り札」なのか? 欧州主導「緑のルール」を冷静に考える
脱炭素化が進む自動車業界で、日本は一体何をすべきか。
約70%の車が内燃エンジンを使用
図は、国際エネルギー機関(IEA)が気候変動目標を達成するために必要な各種パワートレーン(エンジンで発生させた動力を車輪やプロペラに伝える装置)のシェアを予測したものだ。
中央が、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の目指す気温上昇2度を達成するためのシナリオで、電動車が77%を占めている。ここでいう電動車とは「電力を使用する車」で、
・バッテリー電気自動車(BEV)
・燃料電池車(FCV)
だけではなく、
・プラグインハイブリッド車(PHV)
・ハイブリッド車(HV)
までを含んでいる。見方を変えれば、約70%の車がまだ内燃エンジン(ICE)を使用しているのだ。
図の縦軸は、軽量車(LDV)の総保有台数を示している。2019年末時点で、地球上には約15億台(日本は約7842万台)の車が走っており、その平均耐用年数は12年だ。
新型コロナ感染拡大以前の2018年、世界各国で年間約8600万台が販売された。このうち米国、欧州、日本の販売台数は既に飽和状態だった。中国やインドなどの新興国は人口増に伴い増加中だが、今後、高齢化やカーシェアリングの増加で世界の新車販売は、2035年頃に約1億3000万台で飽和する。
一方、世界の自動車総保有台数は2050年頃に20億台を超え、その後もまだ増加すると予測される。これらの車の多くはガソリン/ディーゼルエンジンを使用し、CO2を排出しているが、電動化への改造は事実上不可能だ。とはいえ対象台数の多さを考えると、他の手段で低炭素化を図らなければならない。