新種MaaSが続々誕生 新たなキーワードは「寄り道」である【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(19)

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日本では、パンデミック後の新しいライフスタイルや移動の新しい価値観の創造に向けた大胆な挑戦が各地で行われている。

デジタル技術の進化

JR西日本のサイコロきっぷ(画像:JR西日本)
JR西日本のサイコロきっぷ(画像:JR西日本)

 世界は気候危機への対応、事故とは無縁の世界の実現(ビジョンゼロ)のため、デジタル技術を最大限活用したMaaS(目的地までのルートや交通手段の検索、予約、決済を一括して行えるサービス)が続々と誕生している。

 振り返って日本でも、パンデミック(世界的大流行)後の新たなライフスタイル、新たな移動の価値を創造していく果敢なチャレンジが全国各地で行われていることをご存じだろうか。

 2023年の“MaaS大賞”を自分なりに挙げるとすれば、筆頭はJR西日本が取り組んでいる「サイコロきっぷ」だ。JR西日本が推進する「WESTER(ウエスター)」はサービス開始から200万ダウンロードを超え、世界中のMaaSダウンロード数でみても、世界ベスト5に入るといってよいほどの快挙を続けている。

 その推進役のひとつ「サイコロきっぷ」は販売からあっという間に売り切れるヒット商品だ。2024年2月末終了の2万6000組限定として発売されている大阪発サイコロきっぷの場合、平日月から木曜日大阪発では最大83.3%割引、各方面の確率は、金沢1/3、呉1/3、出雲市2/9、博多1/9と事前に周知され、5000円で福岡、出雲、呉、金沢のいずれかの駅まで往復利用ができるものだ。その行き先は、サイコロを振って目的地が決まるため、ゲーム感覚の企画商品として好評だ。

 利用期間は、2024年1月8日(月・祝)~2024年2月29日(木)の連続する2日間としていることからもおわかりのように、閑散時期への需要を喚起し、列車の乗車率向上も期待できるデジタルならではの仕組みが特徴だ。利用者も3人までがエントリーできるため、仲間同士の新しいコミュニケーションのきっかけとしても興味深い。なお、今回のサイコロきっぷは2023年10月に終了したサイコロきっぷ(4万組限定)の抽選に当選しなかった人限定の発売となっている。

 5000円には、観光地でのお得な特典なども含まれており、さらには、JR西日本が地域で展開するご当地MaaSの「tabiwa(タビワ)」とも連携している。金沢の場合、能登方面のお得な乗り放題きっぷである金沢能登tabiwaや富山県の世界遺産五箇山等へのお出掛けにお勧めな南砺金沢フリーパスがtabiwaから購入可能だ。

 サイコロきっぷのお得な商品にはレンタカーも含まれ、また、金沢ではJR西日本が運営するホテル送迎専用のデマンド交通も期間限定で始まっている。このデマンド交通は、WESTERと連携し定額運賃の定時運行型(11時台~15時台までに4便定時出発する)で金沢駅から香林坊周辺のホテル間を送迎するものだ。

 このようにサイコロきっぷは定額制のサービスと地域ごとの定額制および従量制のサービスを利用者が上手に選択できるように設計されており、拠点間のスムーズな移動と拠点内での周遊を促進する仕掛けと、ピーク需要を分散し、オフピークでの需要喚起にも資するといった、デジタルで新たな移動価値を創出していく次世代の交通サービスといってよいだろう。

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