新種MaaSが続々誕生 新たなキーワードは「寄り道」である【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(19)
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- JR西日本, MaaS, 牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線
日本では、パンデミック後の新しいライフスタイルや移動の新しい価値観の創造に向けた大胆な挑戦が各地で行われている。
「寄り道MaaS」で出会いを演出

また、オープンファクトリーとファクトリーの移動を地域一体で支援する「寄り道MaaS」がいくつかの地域で始まっており、新たな展開を見せている。
オープンファクトリーとは、ものづくり企業が生産現場を外部に公開したり、来場者にものづくりを体験してもらったりする取り組みであり、近年は企業単独ではなく、地域内の企業等が面として集まり、地域を一体的に見せていく「地域一体型オープンファクトリー」に進化してきている。
例えば福井県の鯖江市・越前市・越前町で開催されるオープンファクトリー「RENEW(リニュー)」は、毎年大規模なイベントを開催しており2023年で9年目を迎える先進例だ。越前の漆器、和紙・打刃物、たんす・焼き物といった伝統的工芸品や眼鏡、繊維といった地場産業が半径10km圏内に集積しており、越前地域のファクトリーを巡る10月の3日間のイベントには4万人近くの来場者があったそうだ(2022年開催時)。
地方都市でのイベント開催の場合、マイカー以外の来場者の足の確保が課題であり、2023年のイベントでは、MaaSアプリ「RYDE PASS」からお得なタクシー利用券が購入できたり、レンタサイクルの貸し出しを行ったりするなどオープンファクトリーを巡る移動の足の確保やデジタル化も合わせて取り組んでおり、注目だ。
福井以外にも昨年香川県東部地域で開催された体験型イベント「CRASSO(クラッソ)」では、オープンファクトリーを巡るための足として、無料のデマンド交通CRASSO号を提供する取り組みも始まっている。
ここで紹介した先進的な取り組みは、いずれも新たな移動や移動体験を創出するものばかりであり、2024年は「寄り道MaaS」に注目してみてはいかがだろうか。