中国はもはや一流の自動車大国か? 「自動車産業」の盛衰にみる各国ランク構造、EVシフトで今後どうなる

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日本は自動車産業の発展とともに経済成長し、トヨタ、日産、ホンダといった世界的な自動車メーカーの成長とともに経済大国となった。しかし、自動車産業は常に上り調子だとは限らない。競争に負け、かつての輝きを失ってしまう国やメーカーもある。

歴史と自動車の交差

鈴木均『自動車の世界史-T型フォードからEV、自動運転まで』(画像:中央公論新社)
鈴木均『自動車の世界史-T型フォードからEV、自動運転まで』(画像:中央公論新社)

 そして、国際的な知名度をあげているのが比亜迪(BYD)である。バッテリーメーカーから自動車生産に乗り出したBYDは、すでに多数のEVバスやEVトラックを日本に納入している。

 さらに2023年1月にはスポーツタイプ多目的車(SUV)のATTO3を引っさげて、日本の乗用車市場にも本格的に参入した。国内ディーラー網も整備する本格的な参入であり、EVによって中国が名実ともにT1国になる将来も十分に考えられる。

 T2国では、1973年と2022年を比べて、東側諸国の変動を除けばあまり変化を感じないかもしれないが、1973年にT2国だったオーストラリアが2022年ではリストから抜けている。トヨタや日産、三菱・GMなどが進出したオーストラリアであったが、

・貿易自由化の進展
・賃金上昇

などによってオーストラリアで生産するメリットはなくなってしまったのだ。このように本書を読むと、自動車生産国の栄枯盛衰が見えてくる。

 さらに本書は、さまざまな名車を紹介しながら自動車の歴史をたどるだけでなく、著者の専門を生かして国際的な事件と自動車の関わりも明らかにしている。

 また、自動車が活躍するさまざまな映画を紹介しているのも本書の特徴のひとつであり、自動車好き、歴史好き、映画好きにとって楽しめる内容になっている。

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