ドライバーにカスハラしてどうする 「優れたサービス = 当然」という大きな勘違い、そもそも他者に“期待しすぎ”な現代人とは
交通事業者は「移動の対価」として料金を受け取っているため、利用者とはギブ・アンド・テークの関係にあるはずだ。しかし、利用者の過度な「期待」によって、クレームやカスハラに悩まされている。
期待と感情の関連性

2023年7月、名古屋市に「日本一接客態度が悪いレストラン」がオープンし、連日満席となっているというニュースを筆者(島崎敢、心理学者)は目にした。その名のとおり、「店員の態度の悪さ」を売りにしたコンセプトレストランだ。
一般的に、グルメサイトに書き込まれる口コミは「おいしくない」などの味に関するもの以上に「店員の態度が悪い」など、スタッフの振る舞いに関するものが多い。つまりスタッフの振る舞いは客にとって大きな関心事なのだ。
日本一態度の悪いレストランは、これを逆手に取った仕掛けだ。そして面白いことに、この記事を書いている時点で、口コミに「店員の態度が悪い」とは一言も書かれていない。
日本一接客態度が悪いレストランにはなぜ「店員の態度が悪い」という口コミが書かれないのだろうか。それは、このレストランに行く客が、最初から店員の礼儀正しい態度を
「期待していない」
からだ。それどころか、このレストランを訪れる客は店員の態度の悪さを期待していくので、仮に他の店のようにスタッフが礼儀正しくしていたら、それこそ「期待外れだった」と書かれてしまうだろう。
このように、私たちが「裏切られた」と感じるときには、その前提として、相手に対して何かを期待しているのだ。