代替エネルギーより安い? 「年20%」省エネのシンプルな船舶技術をご存じか

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船は人の移動や物資輸送の道具として大きな役割を果たしてきた。航空機が発達した現在でも、海を渡る物資輸送の主役は船である。本稿では近年の船の環境対策と、省エネを実現する技術を紹介する。

課題山積の代替エネルギー

代替エネルギーのイメージ(画像:canva)
代替エネルギーのイメージ(画像:canva)

 冒頭のIMOに話を戻そう。

 現在、船舶で使われている燃料はほぼ100%が石油燃料(重油)だ。温室効果ガス削減に向けて代替エネルギーの開発・実用化が急ピッチで進められている。

 有力な候補となっているのは、バイオ燃料や水素燃料、アンモニア燃料だ。政府は船舶燃料の移行ロードマップを作成しているし、現に二酸化炭素の排出量がゼロで輸送や貯蔵、利用しやすいアンモニアを燃料としたゼロエミッション船は実現可能性が高いと考えられている。将来、大型船はアンモニア燃料が主流になるとの見方もあるほどだ。

 話はこれで終わりではない。超えるべきハードルは技術面だけではないからだ。バイオ燃料等の代替エネルギーの実用化には、次のような課題が挙げられている。

●原料の確保とコスト
 バイオ燃料は主にとうもろこしやサトウキビなどの作物や、家畜の排せつ物や汚泥などの廃棄物を原料としている。それらの供給量や安定性には限界があり、原料の生産や収集、加工などにかかるコストも高くなりがちだ。

 水素燃料とアンモニア燃料はどちらも水から作る。水を電気分解して水素を生成し、その水素を合成して生まれるのが水素燃料である。アンモニアはさらに、窒素も必要とする。電気分解や合成の過程には、多くのエネルギーを消費し、二酸化炭素を排出することが指摘されている。また、水素やアンモニアの貯蔵や輸送には、高圧化や冷却などの技術が必要で、コスト高だ。

●インフラの整備と安全性
 代替エネルギーを利用するには、それらに対応したハード面の整備が必要だ。給油や充填方法もこれまでとは違ったものになるため、整備には多額の投資や時間がかかるだろう。さらにバイオ燃料や水素燃料は、引火性や爆発性が高いものもあり、取り扱いには十分な注意や安全対策が欠かせない。

 代替エネルギーの実用化には、超えるべき課題が山積していると考えるべきだ。

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