代替エネルギーより安い? 「年20%」省エネのシンプルな船舶技術をご存じか

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船は人の移動や物資輸送の道具として大きな役割を果たしてきた。航空機が発達した現在でも、海を渡る物資輸送の主役は船である。本稿では近年の船の環境対策と、省エネを実現する技術を紹介する。

かじの形で省エネ

ゲートラダー(画像:かもめプロペラ)
ゲートラダー(画像:かもめプロペラ)

 そんななか、比較的シンプルな省エネの方法が注目されはじめている。「ゲートラダー」の発明者・佐々木紀幸氏に特徴を聞いた。

 ゲートラダーは、かじの場所とその形を変えることで省エネを実現するかじシステム。かじは針路を変えるためのものとのイメージが強いが「本来、かじは真っすぐ進むためのもの」と佐々木氏はいう。

 船の計画的な運航には、かじと推進力を生むスクリューの両方が必要だ。しかし、かじがプロペラ後方にある従来の船では、プロペラが船尾を吸い込んで水の抵抗が生まれるため、余分にエネルギーが必要だ。その量は船体抵抗全体の25%にもなる。

 そこで佐々木氏は

「かじはプロペラの後方」

というこれまでの見方を変えることにした。ヒントとなったのはヨット。ヨットは斜めの風を揚力に変えて航行する。それをかじに応用し、プロペラの両側にかじを配置することで、増加する水の抵抗を減らせるのではないかと考えた。

 そして生まれたのがゲートラダーである。欧州で実施されたプロジェクトでは、既存船のかじをゲートラダーに交換するだけで35%の省エネが確認されたという。燃料の使用量を削減することで、結果的に航海中の二酸化炭素の排出を減らし省エミッションにつながる。

「省エネ」「省エミッション」の違い

ゲートラダー(画像:かもめプロペラ)
ゲートラダー(画像:かもめプロペラ)

 省エネと省エミッションの違いについて、佐々木氏は次のように説明する。

「自動車でいえば、ガソリンから水素燃料やバイオ燃料にするのは二酸化炭素の排出量を減らす省エミッション。使う燃料の量には変わりはありません。一方、タイヤを替えるのは省エネです。省エネタイヤは、路面との摩擦を軽減し転がり抵抗を少なくすることで、ガソリン使用量を抑え、燃料削減と同時に省エネを実現しています」

 これまでゲートラダーは日本近海を航行する内航船に多く使われてきた。しかし一般的に貨物の積載量や速度、使用する船などの条件が同じ場合、燃費効率は短距離より長距離の方が高くなる。そのため外洋を航行する外航船は、より高い省エネ効果を見込めるだろう。

「例えば、いま海運輸送で最も活躍している大型コンテナ船を考えてみましょう。大型コンテナ船は1日に100tから200tの燃料を消費します。1日100tとすると、日本円では8000万円。仮に20%の燃料を削減できる場合、1日1600万円以上のコストを削減できる可能性があります。コンテナ船は1年のうち280日ほど航海しているので、年間では約4.5億円の燃料削減です。同時に二酸化炭素の排出は2万8000t減らせます」

と佐々木氏。円安下では燃料費の削減効果はさらに大きくなるだろう。

 ゲートラダーは従来型のかじやプロペラに比べて操船性能も高く、振動や騒音も低減できる。また水中に放出されるいわゆるプロペラノイズも小さく、海中生物にも害を与えない。

 代替エネルギーの実用化には多くの困難がある。さらに昨今の石油燃料価格の高騰をふまえると、カーボンニュートラルに向けた、現実的かつ有効な取り組みになりえるのはゲートラダーかもしれない。

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