代替エネルギーより安い? 「年20%」省エネのシンプルな船舶技術をご存じか

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船は人の移動や物資輸送の道具として大きな役割を果たしてきた。航空機が発達した現在でも、海を渡る物資輸送の主役は船である。本稿では近年の船の環境対策と、省エネを実現する技術を紹介する。

貿易量の約90%は海運

海運のイメージ(画像:canva)
海運のイメージ(画像:canva)

 国連の専門機関である国際海事機関(IMO)によると、世界の貿易量の約90%が海運だ。そんなIMOは2023年7月、国際海運の船から排出される温室効果ガスを2050年までに実質ゼロにする目標を採択した。

 世界全体の温室効果ガス排出量の3%を占める国際海運に対しては、2023年から国境を越えた規制が始まっている。従来、排出規制は新造船のみが対象だったが、既存船に対しても適用されることとなった。

 21世紀のわれわれにとって、古くからある船はレガシーな乗り物に感じられるかもしれない。しかし航空機、そして宇宙船が登場するまでの人類の長い交通の歴史において、船はいつも同時代における最先端のテクノロジーを集約した乗り物だった。

 日本は海運への依存度が高い国である。1980年代にトラック輸送のシェアが伸びてからは、トラックが国内貨物輸送の6割を占めるものの、いまだ4割は海運だ。

 海運輸送はトラックや航空機、鉄道と比べて低コストで大量輸送ができるのが特徴。同じ量の貨物を運ぶ場合に排出する二酸化酸素や窒素酸化物の量が、船はトラックに比べて圧倒的に少ない。

 国土交通省と日本内航海運組合総連合会によると、1tの貨物を1km運ぶのに必要なエネルギー消費量や二酸化炭素排出量は船はトラックの

「5分の1以下」

であるという。そのため、トラック輸送に偏っている国内輸送を是正し、内航海運と鉄道輸送の比率を上げていこうとする機運が高まっている。

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