「高齢者を敬え」「常に空けろ」 ネットの“優先席”論争はなぜ異常なほど白熱するのか?

キーワード :
, ,
公共輸送機関を利用する人にとって、優先席は身近な話題だ。普段から譲ったり譲られたりすることはあり、優先席には座らないと決めている人でも、優先席を巡るやり取りを見ていて、思うところがあるだろう。

盛り上がる「優先席」記事

優先席の目印(画像:写真AC)
優先席の目印(画像:写真AC)

「優先席に関する記事を書いてくれないか」と編集部に頼まれ、いつものように安請け合いをして、筆者(島崎敢、心理学者)は少し後悔している。というのも、優先席の記事は非常に多く、既に議論が出尽くしているように見えるからだ。

 それでも優先席の記事をリクエストされたのは、優先席に関する記事はアクセス数が多いからだそうだ。なるほど確かに、どの記事もコメント欄では議論が白熱しており、大変なにぎわいだ。

 そこで、今回は少し角度を変えて、優先席に関する記事が

・なぜ盛り上がるのか
・コメント欄で繰り広げられる議論にどのような特徴があるのか

心理学的な観点から見てみよう。

 優先席は公共輸送機関を利用する人にとって身近な話題だ。普段から優先席を譲ったり譲られたりすることはあるだろうし、優先席には座らないと決めている人でも、優先席を巡るやり取りを見ていて、思うところがあるだろう。

 しかし、実際に公共輸送機関のなかで「思うところ」を表現する心理的ハードルは高い。一方、コメント欄であれば、優先席を陣取って譲らない若者に「譲ってくれ」といえない人も、優先席の前にこれ見よがしに立つ高齢者に「アピールするな」といえない人も、気楽に自分の意見を表明できる。

 ところが、優先席の運用は人々の譲り合いの気持ちに頼っていて、明確なルールは定められていない。したがって、考え方も人によってまちまちである。だから気楽に表明してみた自分の意見に対して反対の意見が出やすい。

 優先席に関する記事のコメント欄で押される「Goodボタン」と「Badボタン」の数を見ると、他の記事に比べて双方が拮抗(きっこう)していることに気づかされる。それだけ意見が割れているのだ。

全てのコメントを見る