ネット上で“鉄道ファン”を叩く人が、実は「とても損している」ワケ
誤解されがちな「彼ら」
私有地や立ち入り禁止場所へ立ち入っての撮影、ニュース記事へのコメントやSNS上でのマウント合戦など、不適切な行動を取る一部の鉄道好きの人に対して、インターネット上ではさまざまな批判が飛び交っている。
そんな彼らに悪いイメージも持っている人も多いかもしれない。確かに彼らのなかには、ルールやマナーに反する非常識な人たちがいるのは事実のようだが、鉄道好きは“悪人集団”というわけではない。
私(島崎敢、心理学者)は交通や産業の安全のための研究をしているので、鉄道好きの人と知り合ったり、一緒に行動したりする機会が多いが、鉄道好きの人のなかにも素晴らしい人はいるし、彼らの鉄道を愛するがゆえの知識や能力に敬服させられることも多々ある。
そこで、今回はネットでたたかれがちな鉄道好きの人には、実はこんなすごいところがあるという事例をいくつか紹介しようと思う。
「ステレオタイプ」という概念
事例に入る前に、まずは「ステレオタイプ」という概念を紹介したい。私たちは
・国
・地域
・職業
・宗教
・肩書
・趣味
など、特定の共通点を持つ人間の集団に対して
「この集団の人たちには大体こんな性格や気質だ」
という共通認識を持っている。そして、今回のテーマ「鉄道好きの人」に対しても「大体こんな感じの人たち」というイメージがあり、多くの人に共有されている。
ステレオタイプ的な集団の捉え方は、忙しい現代人には便利なツールだ。私の名刺管理アプリは2023年だけで167枚の名刺をスキャンしたようだが、失礼ながら一部の人はどんな方だったか思い出せない。一方、ステレオタイプ的な見方に頼れば、名刺に書かれた職業や肩書などの属性情報から「多分こんな感じの人だろう」とひとまず理解した気になることができる。
しかし、ステレオタイプはひとりひとりの本当の姿を見誤る原因にもなっている。一定数の人間が集まれば、そのなかには背が高い人から低い人までいるのと同じように、優れた人格者から非常識な人までさまざまな人がいるはずだ。
つまり、人間の集団は一定の「分散」を持っているのだ。そして、問題行動を起こしてニュースなどに取り上げられるのは、この分散の非常識側の端の人たちである。
だから鉄道好きに限らず、メディアで取り上げられる情報に基づいて、ある集団をステレオタイプ的に見ることはせず、ひとりひとりを理解しようとする姿勢を持つ必要があるだろう。