電車ベビーカー論争に終止符? ツイッター「子連れはハズレ」発言にみる、現代の病理とその抜本的対策
マナー論議では解決しない

子連れで新幹線に乗ったら、隣の席の人に「はぁーーー最悪」「ハズレだ」と聞こえるように言われた――。そんな体験談が先日、ツイッター上で話題になった。少子化の時代にもかかわらず、子連れで公共交通機関を利用することに冷たい視線を向けるケースが絶えない。現在、その体験談はツイッターまとめサイト「トゥギャッター」に「娘を抱えて新幹線に乗ったら隣の席の人が「ハズレだ」と言ってヘッドホンを付けたという出来事について「気持ちはわからんでもないが…」」というタイトルでまとめられている。
公共交通機関を子連れで利用することの辛さは、子どもを持つ親でなければわからないし、これまでも何度も提起されている問題だ。過去の新聞記事を検索してみたところ、お盆や年末が近くなると必ずと言っていいほど、読者からの投稿や記者の提言などの形で取り上げられている。つまり、問題視する人は多いものの、
「抜本的な解決方法がない」
とも見てとれる。
単に
・マナー
・互いの配慮
の問題として捉えれば、終わりの見えない“床屋談義”になるので、今回はまず、時間をかけて解決が図られた、電車内のベビーカー利用を例に取り上げてみよう。
ベビーカーは“邪魔者”だった過去

例えば、都営大江戸線はベビーカーに子どもを乗せたままの乗車を想定した「子育て応援スペース」を一部車両に設けているが、つい10年前までは
「子どもはおんぶして、ベビーカーは畳むべきだ」
と主張する声が大半だった。実に、子育て応援スペース的な空間の確保が「常識」として定着するまで、半世紀近くもの時間が費やされたのである。
かつて多くの鉄道会社は、ベビーカーを邪魔者扱いしていた。1970年代には国鉄、私鉄、地下鉄各社がベビーカーは
「危険でほかの客の迷惑になる」
として、「乗り入れ禁止」のポスターを掲示。その是非をめぐって論争になった。
論争は一時注目されたものの決着はつかず、多くの鉄道会社は駅や電車内でベビーカーの使用を禁止し続けた。1998(平成10)年に千葉県の市民団体が行った調査によると、当時の千葉県内の鉄道会社(JR、京成、新京成、東武、営団地下鉄、東葉高速、北総開発)のうち、ベビーカーの使用を認めていたのは、
「JRと北総開発」
だけだった。各社の言い分は
・車輪がしっかり固定されず、電車内で動きだす恐れがあるなどベビーカーの安全性に問題がある
・客から迷惑だと苦情を受けている
というものであった。