新幹線「指定席なのに」なぜ並ぶ!? ホームの行列に隠された謎! SNSで話題沸騰、時間・快適さ・秩序…移動経済の深層とは
指定席なのになぜ並ぶのか。新幹線ホームに広がる「見えざる競争」の実態。快適性、荷物スペース、安全――多様な動機が複雑に絡み、1日約45万人の行動に影響を与える“列”の経済合理性とは。
座席指定でも並ぶ心理構造

新幹線のホームでは、指定席車両の乗車口に出発15分前ほどから列ができ始める。座席は事前に確保されているにもかかわらず、多くの人が整然と一列に並ぶ。この光景は日本全国の駅で日常的に見られるものである。
一見すると、この行動には矛盾がある。座席は決まっているため、早く並ぶ必要はないはずだ。実際、SNSでも「指定席なのに並ぶ意味があるのか」といった投稿が先日注目を集めた。しかし、現実に列が形成されているという事実は、そこに何らかの合理性が存在しているはずだ。
では、その合理性とは何か。単なるマナーや慣習といった表面的な説明では不十分だ。交通経済の視点から見ると、そこには複数の構造的要因が複雑に絡んでいる。
棚と導線めぐる乗車競争

新幹線の乗車において、個人の目的は明確である。
「スムーズに席に座りたい」
「荷物を早く棚に置きたい」
「乗車時に人とぶつかりたくない」
これらの行動はすべて、時間やストレス、労力といった“コスト”の最小化を目指している。
例えば窓側の座席を予約していた場合、通路側の乗客が先に座ってしまうと、声をかけて立ってもらう必要が生じる。これは心理的な負担が大きいため、早めに並んで乗車しようと考える人が現れる。荷物棚のスペースも限られている。大きなスーツケースを持つ乗客ほど、早く乗車して確保したいという動機が強くなる。乗車順が重要になるのは、このような背景があるからだ。
こうした個々の事情が積み重なり、結果として列が形成される。「並ぶ」という行動は、指定席制度の下でもなお発生する“取り合い”の場面を反映している。
そこでは、指定されていない要素――収納スペース、座席へのアクセスのしやすさ、移動時の快適さが、暗黙のうちに競争の対象となっている。