「世界で一番嫌い」 マツコ・デラックスはなぜ「二子玉川」を拒絶するのか? 理想化された街に漂う“らしさ”の呪縛、再開発と多様性の葛藤を考える

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都市の魅力は単なる利便性や快適さにとどまらず、文化的・階層的な要素が複雑に絡み合う。マツコ・デラックスの発言が示すように、街の「らしさ」が人々の移動欲求に与える影響は深い。都市の再開発が進む中で、独自の価値観を持つ場所への関心が高まっている。都市と人々の関係性を再考することが、未来の都市形成の鍵となる。

都市空間に潜む感情と階層

二子玉川(画像:写真AC)
二子玉川(画像:写真AC)

 東京都心から郊外へ、あるいは下町から副都心へ。人々の移動には、単なる地理的な意味だけではなく、階層性、文化性、情緒性といった複雑な要素が絡み合う。

 タレントのマツコ・デラックスが2015(平成27)年1月の「月曜から夜ふかし」(日本テレビ系)で語った

「二子玉(にこたま。二子玉川の意味。東京都世田谷区の地区)ってほんと世界で一番キライかもしれない街なのよ」
「あわない、私は」
「無理だわ」
「だいたい世田谷に住みたいなんてやつは、ファッション誌に書いてあることを鵜呑みにするようなやつらよ」

「(小岩・赤羽・蒲田は)おしゃれディープ」
「(小岩は)知れば知るほどディープよ。逃げたくなるけど、逃げられなくなる」
「(小岩のディープさが)おもしろくてあえて住んでいる人もいっぱいいると思う」

との発言は、その表層的な好みや嗜好を超えて、都市と感情、空間とアイデンティティを巡る深層の構図をあぶり出している。ちなみに、マツコはこれまで同番組で繰り返しこのような発言をしてきた。つい最近もあった。特に東急田園都市線への嫌悪が有名だ。半分“ネタ化”している。

 本稿では、都市の快適さと魅力を形づくる構成要素を多面的に捉え、移動を通じて形成される社会的ネットワークや都市階層の再編を読み解く。そこに浮かび上がるのは、機能性や利便性では語れない都市の魔性ともいうべき引力である。

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