トヨタの給与は「8%」減? 正社員・非正規の格差是正で“正社員の待遇”を下げるのはアリなのか
日本の雇用者6032万人のうち、35%は非正規雇用者である。そんな彼らの賃金は正規雇用者の“6割程度”だ。格差是正のため「同一労働同一賃金」は達成できるか。
「同一労働同一賃金」の経緯

総務省の労働力調査(2022年)によれば、日本の雇用者6032万人のうち、非正規雇用者は2101万人とおよそ35%である。
しかし、その非正規雇用者の賃金は正規雇用者の“6割程度”といわれている(米国も6割程度)。ヨーロッパ諸国は7~8割程度(厚生労働省ウェブサイト「働き方改革の背景」より)だ。
雇用形態の違いによって不合理な待遇差別があるため、このような結果となっているのではないかということで、
「同一労働同一賃金(同じ仕事なら同じ賃金)」
を目指すため、
・パートタイム・有期雇用労働法(2021年4月1日全面施行)
・労働者派遣法(2020年4月1施行)
が施行された。
ちなみに、同一労働かどうかは、「業務内容や責任の程度」「職種変更や転勤の有無・範囲」等を検証して判断することになっている。
正社員待遇を引き下げ格差解消

さて、本稿のテーマは、同一労働であるとみなされた場合に、正規・非正規の格差を解消するために、
「正規社員の待遇を下げてもよいのか」
ということだ。
これに関して、先日問題提起となる裁判があった。正職員の手当を削って非正規職員と同一労働同一賃金化を図る手法は違法だとして(本来なら非正規職員の報酬を引き上げるだけでよいのではないかということ)、済生会山口総合病院(山口市)の正職員9人が手当減額分の支払いを求めていた訴訟である。
これにおいて、山口地裁は5月24日、
「請求棄却」
の判決を出した。
正規雇用者の待遇を引き下げることで正規・非正規間格差を解消することを容認する初の司法判断であり、正社員の手当削減の動きが他の企業にも広がる可能性もあるとして、ニュースにも取り上げられたのは記憶に新しいところだ。