トヨタの給与は「8%」減? 正社員・非正規の格差是正で“正社員の待遇”を下げるのはアリなのか
日本の雇用者6032万人のうち、35%は非正規雇用者である。そんな彼らの賃金は正規雇用者の“6割程度”だ。格差是正のため「同一労働同一賃金」は達成できるか。
経営右肩下がりなら「仕方ない」判断
本判決の正否はここではいったん置いておきたい。
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ただ、そこでなされた判決の根拠は
「経営が右肩下がりであり、人件費増加抑制に配慮しつつ手当の組み替えを検討する必要があった」
というものであった。
労働契約法10条は、合理性があれば労働者に不利な一方的な就業規則の変更を例外的に許すという内容を定めている。もし経営が右肩上がりであれば、人件費の総額も増やすことができるはずなので、格差是正のために正社員の待遇を引き下げることはできない。
ただ、人件費への予算が減るなかで「同一労働同一賃金」を実現するためには、正規雇用者が既得権を手放すのも仕方ないということであろうか。つまり、正社員の待遇に手をつけることができるか否かは
「業績次第」
ともいえる。
自動車業界においてシミュレーション
会社の業績と支払える人件費の総額が連動すると考えると、自動車業界で同一労働同一賃金を推し進めるならばどんなことが起こるか。
自動車業界は期間従業員(期間限定の有期契約で働く契約社員)などをはじめ、各社ともに万人単位で非正規雇用者を抱える。
東洋経済の調査(2023年4月発表)による「非正社員が多い企業ランキング」では、トヨタ自動車は日本で4位の8万7122人(非正規比率18.9%)、
・デンソー:13位(3万1人、15.2%)
・ホンダ:19位(2万7069人、11.7%)
・アイシン:20位(2万5829人、18.1%)
と、20位以内に4社も入っている。さて、もしこれらの企業業績が低迷しているとして、正規雇用者の待遇を下げることで格差是正をしたとしたらどうなるだろうか。