トヨタの給与は「8%」減? 正社員・非正規の格差是正で“正社員の待遇”を下げるのはアリなのか
日本の雇用者6032万人のうち、35%は非正規雇用者である。そんな彼らの賃金は正規雇用者の“6割程度”だ。格差是正のため「同一労働同一賃金」は達成できるか。
正規雇用者の賃下げ率を計算
話を単純にするために、正規雇用者の報酬を100、非正規雇用者60とする。冒頭に述べたように、平均的に非正規雇用者の報酬は正規雇用者の6割といわれている。
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そこに各社の正規・非正規の人数をかけて総額人件費を計算して、その後全従業員数で均等割すると、正規・非正規が完全に平等になった場合(つまり「同一労働同一賃金」が実現された)の報酬の変化がわかる。
すると、賃下げ率は
・トヨタ:7.6%
・デンソー:6.1%
・ホンダ:4.7%
・アイシン:7.2%
となる。
正社員が報酬を引き下げれば、その原資を使って非正規雇用者の報酬が改善されるということになる。たった数%という気もしないでもないが、トヨタの平均年収は857万1245円(2022年3月31日時点)である。その7.6%とは、65万1414円だ。
インフレ下の賃下げは非現実的
そもそも、現在の日本はインフレが起こり始めている。総務省によると2023年4月分の2020年基準の消費者物価指数は「生鮮食品及びエネルギーを除く総合指標」を見ると、前年同月比4.1%の上昇となっている。
これと合わせて考えると、実質1割程度の賃下げを行わなくては、総額人件費を維持しながらの正規・非正規の格差是正はできないということである。もちろんこれは単純計算であり、実際にはもっと複雑な要素がからむが、おおよその目安として考えてほしい。
現実的には業績が悪化していようとも、このインフレの状態では、格差是正のために正規雇用者の報酬を下げるのは
「現実的ではない」
と思われる。