クルーズ船に乗る「富裕層」マネーは、本当に寄港地の“救世主”となれるのか

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コロナ禍で大ダメージを受けたクルーズ船だが、現在はそのインバウンド需要に期待が高まっている。懸念点はないのか。

地元経済に寄与しないケースも

クルーズ船(画像:写真AC)
クルーズ船(画像:写真AC)

 なにより問題なのは、クルーズ船が寄港して乗船客が下船しても、地域が潤うとは限らないことだ。

 高知大学人文社会科学部国際社会コース・岩佐和幸ゼミナールが2019年にまとめた調査報告書『増大するインバウンドと地域経済』には、高知新港に寄港したクルーズ船による経済効果に関する調査が記載されている。

 この調査によると、高知市中心商店街ではクルーズ船寄港時に84%の店舗で外国人が来店、42%の店舗で売り上げが増えたとされている。クルーズ船の恩恵を受ける店舗は半分以下にすぎないのだ。

 また、地元経済には全く寄与していない店舗事例もある。報告書では、2018年に高知市卸団地にできた、福岡市を拠点とする大型免税ドラッグストアを取り上げている。

 同店はクルーズ乗客の経済効果をあてにしてオープンしたが、地域経済には寄与していない。理由は単純で、高知県の産品は置かれておらず、アルバイト以外の社員はすべて拠点のある福岡市から派遣されているためだ。

 想定される主な顧客は、高知新港から入国する乗船客だが、彼らからの収益は地域経済に全く寄与しない。今後、クルーズ船の寄港地として注目される地域では同様の問題が浮上するだろう。

 円安の日本で多くの買い物をする乗船客への期待は大きいが、マイナス面もあることは忘れてはならない。

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