クルーズ船に乗る「富裕層」マネーは、本当に寄港地の“救世主”となれるのか
コロナ禍で大ダメージを受けたクルーズ船だが、現在はそのインバウンド需要に期待が高まっている。懸念点はないのか。
寄港するだけで経済効果

クルーズ船は、寄港するだけで経済効果が見込まれる。もっとわかりやすくいえば、クルーズ船は
「寄港するだけで必ずもうかる」
のだ。
国内の港湾では、
・入港料
・岸壁使用料
・水先料
・曳船料
などが決められている。
入港料や岸壁使用料は港のある自治体の収入だが、水先案内人(船舶が港湾などを通航するとき、船に乗込んで安全に運航するように導く案内人)に支払う水先料やタグボートを利用する曳船料などは、地元業者の収入である。つまり、クルーズ船がやってきて岸壁に接岸すれば、それだけで地域経済にプラスとなるわけだ。
これに加えて大きいのが、乗船客の消費だ。大抵の乗船客は寄港地で下船し、観光や買い物を楽しむ。国土交通省の試算によれば、クルーズ船が一度寄港すると、
・ひとり:3~4万円
・1寄港:1億円
の経済効果があるとされる。
観光庁の『訪日外国人の消費動向2019年報告書』によれば、クルーズ客の旅行消費額は805億円。うち買い物代が768億円とされている。この消費を逃さない手はない。そこで国内各地の海に面した港湾を持つ地域では、2010年代半ばからクルーズ船の寄港を誘致する動きが急激に加速したのである。
コロナ禍で一度はゼロになったクルーズ船による経済効果だが、2023年はそれが急激に回復されると期待されている。国土交通省の資料によれば、2023年3月以降に予定されているクルーズ船の運航は166本(定員3000人以上が71本、1000人以上が56本、1000人未満が39本)となっている。