クルーズ船に乗る「富裕層」マネーは、本当に寄港地の“救世主”となれるのか

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コロナ禍で大ダメージを受けたクルーズ船だが、現在はそのインバウンド需要に期待が高まっている。懸念点はないのか。

クルーズ船経済の弱点

クルーズ船(画像:写真AC)
クルーズ船(画像:写真AC)

 それでも、まだ見通しは厳しい。コロナ禍以前の2019年にはクルーズ客の8割を占めていた、中国発クルーズの再開が決まっていない。2023年の下半期以降、中国発クルーズが再開されれば、クルーズ船のもたらす経済効果はコロナ禍以前にまで回復し、さらなる拡大も期待されている。

 既に、一部の港湾では寄港数が増加している。秋田県の秋田港では、2023年のクルーズ船寄港が過去最多となる30隻と予定されている。秋田県は2023年中の乗客を6万人、消費総額を計6億円と推計している。

 秋田県の経済規模は決して大きくない。最新の統計では2019年の県内総生産は名目で3兆6248億円。ひとり当たりの県民所得は271万3000円だ。同年の国民ひとりあたりの所得が317万1000円となっていることに比べて14%も少ない。そんな秋田ではクルーズ船への期待は日々増している。

 しかし、クルーズ船に頼った経済活動には弱点もある。まず、クルーズ船は年間を通して寄港しない。需要は夏になると増え、冬は閑散期を迎えるため、安定した収益が期待できない。

「季節商売」といってしまえばそれまでだが、さらに過剰な期待を寄せにくいのは、不安定な寄港数だ。2023年に寄港したクルーズ船が、2024年も来るとは限らない。横浜や神戸、博多などの港湾なら常に一定の寄港が見込まれるが、地方の港湾ではそうならない。

 寄港地を決定するのはクルーズ船の運営会社である。誘致活動は行えるが、確約されるわけではない。その運航は想像以上に不安定なものなのだ。

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