横浜港「ロイヤルウイング」63年の歴史に幕 観光クルーズ船は“コロナ後”という名の大海を渡り切れるのか?
63年の歴史に幕
2023年5月14日、横浜港大桟橋にその姿を長らくとどめていたクルーズレストラン船の「ロイヤルウイング」が運航を休止した。
横浜港内を観光クルーズしつつ上質な料理を提供するクルーズレストラン船となったのは、1989(平成元)年から。以来34年という長期にわたって、ある意味“横浜港のアイドル”的なイメージとともに親しまれた名船だった。
客船として極めて長い運航史を記録してきたわけだが、実はこの船にはさらに長い歴史があった。横浜にやってくる前、ロイヤルウイングは「くれない丸」という船名で大阪~別府の瀬戸内海航路を走っていた関西汽船の花形客船だった。
期待の新造船として同航路に就航したのは1960(昭和35)年3月6日のこと。すなわち先の休止の時点で建造から63年を経過していた大ベテラン船だったということである。
船名「くれない丸」の歴史
ちなみに関西汽船におけるくれない丸という船名は、1960年の時点で既に3代を数えるという伝統あるものだった。関西汽船の母体でもあった大阪商船が、初代「紅丸」を就航させたのは1912(明治45)年だ。
続く2代目紅丸が就航したのは1921(大正10)年。この2代目は商船設計の神様と呼ばれ、戦前から戦後間もなくに掛けて数々の名船を手掛けた和辻春樹の手によるものだった。
なお、これらくれない丸の系譜は、関西汽船を引き継いだ商船三井グループのフェリーさんふらわあにも継承されており、最新型船である「さんふらわあくれない」が伝統ある大阪~別府航路に就航したのは2023年1月のことである。
3代目くれない丸からロイヤルウイングに至る船歴のなかで、途中保管船として営業航海から離れていた期間もあった。しかし、建造から63年を経てなお現役の座にあったというのは世界的にもほとんど例がない。もちろん日本国内では最古の現役客船だったのがロイヤルウイングだった。