欧州の行き過ぎた環境意識が「鉄道」利用を阻害する

キーワード :
,
環境運動の高まりで一躍有名になった「飛び恥」。その結果、それに比例する形で鉄道利用者の数は増加した。今後の懸念点とは。

鉄道利用の増加とコロナ後の回復

高速道路と並走するドイツの高速列車ICE。ドイツでは鉄道への投資を進める一方、高速道路建設を促進するなど道路交通へ傾く傾向にある(画像:橋爪智之)
高速道路と並走するドイツの高速列車ICE。ドイツでは鉄道への投資を進める一方、高速道路建設を促進するなど道路交通へ傾く傾向にある(画像:橋爪智之)

 近年は高速鉄道などの新線開業によって、その沿線の利用者数に増加が見られることはあったが、それとは関係なく鉄道全体で利用者数が伸びたのは、このflygskam運動の影響であることは間違いない。

 この頃から、高速鉄道ではない在来線の長距離国際列車や夜行列車なども再び注目を集め、ウィーン~パリ間などかつて廃止されたルートに、列車が再設定された例もあった。

 その後、2020年に世界中を混乱させたコロナ禍によって、都市間の移動に制限が設けられるようになったことから、いったん下火となったが、コロナ禍が落ち着くと、乗客は再び鉄道へ戻ってきた。

 長期間にわたって移動に制限が設けられ、自由に旅ができなかった反動から、2022年にはコロナ禍が始まる前の2019年頃の水準にほぼ戻った。

ウクライナ侵攻が鉄道利用を後押し

10年以上の空白期間を経て運行再開されたウィーン~パリ間の夜行列車ナイトジェット(画像:橋爪智之)
10年以上の空白期間を経て運行再開されたウィーン~パリ間の夜行列車ナイトジェット(画像:橋爪智之)

 ドイツ鉄道は2022年、対前年比で約40%増加となる延べ20億人が鉄道を利用するなど、大きく数字を伸ばした。そのほかのヨーロッパ各国でも、軒並み利用者数の大幅な増加が報告されている。

 ところがコロナ禍が一段落すると、今度はロシアのウクライナ侵攻が始まった。世界は再び、大きな難問を抱えることになるのかと懸念されたが、皮肉にもこの侵略戦争は鉄道利用者の増加を後押しすることになる。

 軍事侵攻の影響でガソリン価格が高騰したことから、航空機は燃油サーチャージによって運賃が上昇、自動車のガソリン価格も一時は倍近くにまで跳ね上がり、自家用車の利用が控えられた。それまで飛行機や自家用車を使っていた人たちが、鉄道へ流れてきたのだ。

 ともあれ、環境負荷が少なく、世界情勢から受ける影響も限定的である鉄道は、安定した公共交通機関として多くの人たちに支持されており、今後も鉄道の利用者数は増加していくことが予想される。

全てのコメントを見る