世界最大の鉄道車両メーカー「中国CRRC」、欧州にいまだ本格参入できない残念事情

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世界の鉄道車両メーカーで売上高世界シェア1位の企業は「中国中車」、いわゆる「CRRC」だが、まだヨーロッパには本格進出できていない。その背景を解説する。

わずか数両の実績

CRRCが開発した汎用型電気機関車バイソン。2022年の国際鉄道見本市「イノトランス」に同社唯一の実車として展示された(画像:橋爪智之)
CRRCが開発した汎用型電気機関車バイソン。2022年の国際鉄道見本市「イノトランス」に同社唯一の実車として展示された(画像:橋爪智之)

 世界の鉄道車両メーカーで売上高世界シェア1位の企業は、言わずと知れた「中国中車」、いわゆる「CRRC」だ。中国の2つのメーカー、中国南車集団と中国北車集団が合併して2015年に設立。それまで鉄道メーカーの世界ビッグ3と呼ばれ、3社だけで世界シェアの過半数を占めていたシーメンス、旧ボンバルディア、アルストムを大きく上回り、一気に世界シェア1位となった。

 合併の理由は、業務効率化と国際競争力の強化であった。合併後、CRRCは米マサチューセッツ州に工場を建設。マサチューセッツ湾交通局から受注した地下鉄車両284両を製造するなど、アメリカ市場へ本格的に参入していった。その後もアジアや南米など、世界各国で徐々にその存在感を示していった。最近では、インドネシアの高速鉄道で試運転が始まったというニュースも流れてきた。

 しかし、それでもまだ売上高の8割以上は中国国内向けの受注によるもので、国際競争力が大きく高まったとは言い難かった。その理由のひとつに、CRRCはまだヨーロッパ市場で爪痕を残していないということがあった。

 ヨーロッパは日本と同様、世界で最も高度な鉄道網が構築されている地域で、鉄道発祥の地でもある。当然、そこで爪痕を残せば大きな実績となることは間違いないが、いわゆる西欧、中欧と呼ばれる地域で、CRRCの車両を本格的に導入しているところは皆無(2023年2月現在)。ドイツのハンブルク市が入れ替え用の機関車をわずか数両導入しただけという状況だ。世界シェア1位のメーカーとして、これは由々しき問題と言える。

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