「ここで写真を撮るな」 欧州の“鉄道撮影”厳しさ増す現実、個人情報の過剰保護は不自由社会もたらさないか

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英国ガトウィック空港駅で列車を撮影しようとして、注意を受けた筆者。なぜそのようなことが今起きているのか――現地の状況をお伝えする。

英国で起きた驚きの体験

フィレンツェ駅構内で特別列車を撮影をするファン。イタリアでは普段でも駅構内で撮影をする人をたまに見かける(画像:橋爪智之)
フィレンツェ駅構内で特別列車を撮影をするファン。イタリアでは普段でも駅構内で撮影をする人をたまに見かける(画像:橋爪智之)

「Nonononononono!! Don’t take photo(写真を撮らないでください)!!!」

 中年女性の駅員が、ものすごいけんまくで私(橋爪智之、欧州鉄道フォトライター)を怒鳴りつけてきた。そのけんまくにあぜんとする。2023年3月に取材のため降り立った英国ガトウィック空港駅で、到着してから最初の1枚として、停車していたロンドン市内への列車を撮影しようとしたときだ。

 一眼レフなどの大型機材で撮影していたら、場合によっては制止されることもあるのではないかと思うかもしれない。しかし私が手にしていたのは

「スマートフォン」

である。携帯電話を列車へ向けただけで怒鳴られたのだ。無論、立ち入り禁止の場所へ入ったわけでもないし、黄色い線からはみ出すようなホームの端に立ったわけでもない。

事務所の許可が必要

ガトウィック空港駅(画像:(C)Google)
ガトウィック空港駅(画像:(C)Google)

 英国のインフラを管理するネットワーク・レイル社のホームページを見ると、駅で撮影をすることは歓迎するが、ネットワーク・レイルの事務所で許可を受けてからにしてほしい、との記載がある。

 それ以外にも、フラッシュ撮影や制限区域への進入、線路横断など、一般的に禁止されていることはしないようにといった記載があり、三脚については

「可能な限り避けてほしい」

という言葉にとどめてある。

 ただし、スマートフォンについての言及はない。そもそもスマートフォンは電話で、普通に電話をしているだけ(カメラを構えているように見えて、実際はカメラ機能を使って通話をしている可能性もあるかもしれない)の場合もあるはずだ。

 にもかかわらず、怒鳴るほどに制止されるというのは釈然としない。これでは、家族や友達と通話もできないし、ちょっとしたスナップも撮影できないということではないか。

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