「日本に追いつけ、追い越せ」はいずこへ? ヨーロッパの高速鉄道がこれまでの“スピード競争”をあっさり捨てたワケ

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かつて新幹線と“スピード競争”を繰り広げたヨーロッパの鉄道において、高速化一辺倒の時代は終わりを告げた。その背景を解説する。

20世紀後半から過熱

東海道新幹線の成功を受け、フランスの威信を掛けて開発された初代TGV-SE型。写真の編成は1981年、当時の世界最高速度380km/hを樹立した(画像:橋爪智之)
東海道新幹線の成功を受け、フランスの威信を掛けて開発された初代TGV-SE型。写真の編成は1981年、当時の世界最高速度380km/hを樹立した(画像:橋爪智之)

 20世紀後半から21世紀にかけて、世界では高速列車のスピード競争が過熱していた。世界初の高速鉄道とされる東海道新幹線が1964(昭和39)年に開業して以来、ヨーロッパを中心として各国で高速列車の開発が進められ、1980年代以降にはフランスのTGVやドイツのICEなどが相次いで誕生した。

 1981年にTGVが運行開始した際、最高速度は東海道新幹線の210km/h(当時)より50km/hも速い260km/hに設定され、後に新幹線が最高速度を220km/hへ引き上げれば、TGVも負けじと270km/hへ引き上げるなど、かなり相手を意識していたのが見て取れた。

 1989年には、TGV大西洋線が営業最高速度300km/hに到達し、ここから高速列車の300km/h運転時代が始まった。他国でもドイツ、イタリア、スペインと相次いで高速鉄道が開業していき、21世紀に入るとヨーロッパだけでなく、韓国や台湾、中国でも高速鉄道が開業した。

 もちろん、ただ競争相手に勝つとか、世界一を狙うという記録のためではなく、主要都市間の時間短縮や、劣勢となっていた航空機や自家用車との競争に打ち勝つため、という大きな目標があったからこその高速化である。

 速度向上の効果は絶大で、フランス国内の航空便はTGV路線網の拡充によって相次いで撤退、ドイツも一部の航空便が鉄道へ委託されるなど、それまで衰退してきた鉄道は高速化によって息を吹き返すことになった。

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