「お客様は神様ではない」 秋田のバス会社“反論広告”に見る、クレーマーの危うき心理状態 暴言は乗客を危険にさらす行為“そのもの”だった!
直接的暴力から「言葉の暴力」の時代へ
バスや鉄道などの旅客事業者で働く人たちが深刻なカスタマーハラスメントにあっている実態を、当媒体が「「お客様は神様ではない」 秋田のバス会社“クレーマー反論広告”に見る、カスハラ被害の深刻さ 暴言は拳よりもタチが悪い」(ライター:星野正子、2023年4月18日配信)で報じた。
記事では、秋田のバス会社「第一観光」の「クレーマー反論広告」を取り上げ、かつてトラブルの中心が乗客同士の暴力であった時代から、旅客事業者の従業員に矛先が向けられ、暴力が減った分、言葉の暴力が陰湿化してきた歴史を紹介した。
以下に、クレーマー反論広告の文言を引用する。
「『その苦情、行き過ぎじゃありませんか?』(カスタマーハラスメントについて)
近年、些細なことで理不尽なクレームや過度な要求をするお客様がおられます。確かに、当方に非があり、お詫びする場合もありますが、車内外のドライブレコーダーで確認し、非がないことをお伝えしても一方的に攻撃されます。バスやタクシーの運転手は、一般の方が朝食を食べている時間帯からもうハンドルを握っており、オペレーターは電話の受付業務をしています。そうして子供たちの通学、高齢者の通院・買い物など、地域の足となって交通を担っています。弊社はご利用者様に安全な移動を提供するとともに、社員を守ることも大切だと思っています。お客様と社員は対等の立場であるべきで、お客様は神様ではありません。今後、理不尽なクレームや要求には、毅然とした対応を取り、場合によっては乗車をお断りいたします。これからも公共交通機関としての使命を果たしてまいりますが、弊社の考えもご理解いただけますようお願い申しあげます」
そこで今回は、カスタマーハラスメントの問題を心理学の側面から考える。暴言を吐く人の
「心の中」
には何があるのだろうか。暴言を吐かれた人の心はどのような影響を受けるのだろうか。そして、社会はこの問題に対して何ができるのだろうか。
安全な公共輸送機関は「日本の誇り」
はじめに断っておくが、筆者(島崎敢、心理学者)は暴言を肯定するつもりも容認するつもりもない。
秋田のバス会社が広告に出したように、公共輸送機関を動かす人たちは、他の人が寝ている時間から人たちの生活の足を守っている。電車やバスが時刻表通りに来るのが当たり前と思っている人もいるかもしれないが、日本ほど公共輸送機関が正確かつ安全に運行している国はない。
安全で正確な公共輸送機関の運行は外国人観光客を驚かせる
「日本の誇り」
であり、公共輸送機関に携わる人たちの日々のたゆまぬ努力によって実現されている。だから、この奇跡とも呼べるような正確性が多少揺らいだぐらいで、それを支える人たちを罵倒してよいはずはない。
むしろ風邪をひいたときに健康に感謝するように、公共輸送機関にトラブルがあったときこそ、日々その恩恵にあずかっていることを再認識し、感謝の気持ちを新たにするべきだろう。