「お客様は神様ではない」 秋田のバス会社“クレーマー反論広告”に見る、カスハラ被害の深刻さ 暴言は拳よりもタチが悪い
秋田県能代市で路線バスやタクシーを運行する第一観光バスは3月中旬、地元紙に「お客様は神様ではありません」という意見広告を掲載。ネットでたちまち話題となった。今話題の「カスハラ」について考える。
鉄道係員への暴力、年間「400件」以上

調査ではカスハラの内容を次のように記している。
・暴言:49.7%
・何度も同じ内容を繰り返すクレーム:14.8%
・威嚇/脅迫:13.1%
ほかの調査も見てみよう。日本民営鉄道協会が公表した統計によると、2021年度に発生した鉄道係員への暴力行為は
「406件」
となっている。推移を見てみると、2011(平成23)年の911件からは、大幅に減少しているものの、いまだ多くの暴力行為が発生していることがわかる。この統計はあくまで
「直接的な暴力行為」
を示したものなので、暴言やクレームの類いはさらに数多く発生しているだろう。
問題の顕在化は1980年代から

では、交通事業者へのカスハラが問題視されるようになったのは、いつ頃なのか。
暴力行為そのものが問題になった時期を調べて見ると、鉄道では既に1980年代から始まっている。1985(昭和60)年3月21日の『朝日新聞』によると、国鉄首都圏本部が車内での暴力や迷惑行為への対応を強化していることが報じられている。
記事によれば、国鉄は車内での暴力や迷惑行為を防ぐため、車掌の巡回や鉄道公安職員によるパトロールを強化。さらに、禁煙区間での禁煙順守の呼びかけを増やしたことが記されている。この記事では
「他人に迷惑をかけている乗客への注意を強化することなどを決めた」
とある。当時の問題点は、乗客が別の乗客に対してする暴力行為だったのだ。
これは私鉄でも問題になっていたようで、同年には日本民営鉄道協会(民鉄協)でも車内モラルや乗車マナーの向上を図るため、
・車内放送
・ポスター掲示
を行うことを決めている。キャンペーンの最中には、帰宅途中の国鉄職員が池袋駅で後から乗ってきた女性に押されたことに腹を立てて殴り、取り押さえられる事件も起きている。実に暴力的な社会だった。