街全域「最高時速30km」が世界の新標準? 環境・安全を両立する交通政策をご存じか【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(10)
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ロンドンは2041年に死亡・重傷事故ゼロ目指す

ロンドンでは、2041年に死亡事故と重傷事故をゼロにする「ビジョンゼロ計画」を策定している。死亡事故だけではなく、重傷事故をゼロにするという野心的な計画だ。
2024年までには市内の30km/h規制対象区間(ゾーン30)を倍増する予定であり、この3月にも、さらに5つの地区に対して28kmを超える路線長でゾーン30を拡大していくそうだ。併せて年間100万件のスピード違反に対応できるよう、道路交通マネジメントのデジタルトランスフォーメーション(DX)を積極的に推進、加速していく構えだ。
市では、速度規制の拡充により、徒歩、自転車、公共交通利用の促進を期待しており、街路自体を健康で安全が確保された持続可能な「ヘルシー・ストリート」の実現を目指してもいる。
サディック・カーン市長の下、積極的に自転車レーンの整備を進め、自動車以外の選択肢を積極的に推進してきた。自動車、自転車、新しいモビリティサービス、公共交通が速度30km/h以下で共存することで、それぞれの速度差が小さくなり、現実的に選択できる移動手段の多様化も進むといえる。
ロンドンでは、今や、マイカーの方が速いという固定観念も崩れつつあるのではないだろうか。実際、直近2月の報告では、ロンドンで初めて、日中の自転車交通量が自家用車の交通量を上回ったそうだ(市内主要道路30カ所の秋季調査結果より)。
このように、ロンドン市民の行動変容が短期間で顕著となっており、安全や環境を重要視したまちづくり、面的な速度抑制政策である最高速度30km/h規制により、道路交通政策のパラダイムシフトが確実に起きていると言えるだろう。
わが国では、生活道路を中心に最高速度30km/h規制がパッチワークのように広がりつつあり、一方で都市部の車道には、自家用車、バス、トラックに加えて、自転車や電動キックボードなどが混在した状態が続いている。
現状、マイクロモビリティと一般車の物理的な走行空間の分離も一朝一夕には困難だ。歩行者などの移動弱者と自動車による交通事故は後を絶たない。即効性もあり、効果が持続し、スローな交通文化という都市に新たな価値観をもたらすことが期待される、まち中の面的速度抑制策にかじを切る時期ではないだろうか。