大阪珍百景 梅田の「ビルをぶち抜く高速道路」はなぜ誕生したのか? 背景にある立体道路制度をひも解く
阪神高速11号池田線「梅田出入口」の、大阪空港方面からの流出路が、ビルの地上5~7階部分を貫いている。いったいなぜなのか。
都市高速がビルを貫く場所

皆さんは「大都市」にどのようなイメージを持つだろうか。高層ビルが立ち並び、その隙間を無数の道路が網の目のように張り巡らされている――そんな光景ではないだろうか。
それは、大都市の道路交通におけるバイパス機能を果たす都市高速も例外ではない。性質上、一般道路のような平面交差はほとんどなく、基本的には高架区間や地下区間で地上に立ち並ぶビル群を避けて建設されているのが一般的であり、一般的にイメージされる大都市の風景にマッチするのではないだろうか。
ビルの地上部分を都市高速が貫いている光景など、ほとんどの人が想像しないし、信じてもくれないだろう。だが、そんな場所が大阪市福島区に実在するのだ。
貫く都市高速は、阪神高速11号池田線「梅田出入口」。大規模な再開発工事で話題の「うめきた」地区への最寄りであるこの場所の、大阪空港(伊丹空港)方面からの流出路が、ビルの地上5~7階部分を貫いている。
一方、貫かれるビルは地上16階、地下2階、棟屋1階で構成されるTKPゲートタワービル。LPガス設備賃貸業や不動産賃貸業をなりわいとする末澤産業がオーナー(地権者)であり、現在は貸し会議室運営大手のティーケーピーが、梅田出入口の流出路が貫いている階層以外の全てのフロアを1棟借りし、全館、TKP大阪梅田ビジネスセンターとして運営している。
地上1階部分や地下部分ならばいざ知らず、文字通り道路がビルを貫く光景は、日本のみならず世界的にも珍しい。そんな珍しい光景は一体なぜ誕生したのだろうか。その背景には、地権者である末澤産業と道路運営者である阪神高速道路公団(現:阪神高速道路株式会社)、双方の思惑のぶつかり合いがあった。