大阪珍百景 梅田の「ビルをぶち抜く高速道路」はなぜ誕生したのか? 背景にある立体道路制度をひも解く

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阪神高速11号池田線「梅田出入口」の、大阪空港方面からの流出路が、ビルの地上5~7階部分を貫いている。いったいなぜなのか。

街づくりの可能性を広げた立体道路制度

道路の立体的区域のイメージ(画像:国土交通省)
道路の立体的区域のイメージ(画像:国土交通省)

 道路と聞くと、多くの人々は地表面、すなわち路面のみをイメージすることだろう。確かに、言葉通りに捉えればそういう解釈となる。

 ところが、道路ひとつとっても法律が絡み、道路は法律上「道路区域」という領域で定義される。この道路区域が厄介で、なんと路面の上空も地下も道路区域と定義されるのだ。つまり、多くの人々が平面であると考えている道路は、実は法律に照らし合わせると

「上下方向に長く伸びる“立体”」

なのだ。

 言うまでもなく、道路区域内を勝手に占有することは許されない。ある日突然、道路の真ん中にビルや住宅が建設されたり、何の予告もなく道路を封鎖したりしてイベントが開催されることがないのはこのためだ。

 そして、道路区域の定義が路面の上下含めた立体空間である以上、たとえ路面に接していなくても基本的には道路区域内に何かを建設してはならないのだ。この解釈は都市高速に多く見られる高架部でも同様である。

 例えば、高架下を個人や法人が何かで使用したい場合、その者は道路管理者から道路占有許可を受けなければならない。つまり、このルールに基づけば、都市高速がビルを貫くということなどあり得ず、街づくりを立体的に捉える場合、かなりの制限がかかっていたのだ。

 そうした状況を改善するために導入されたのが前項末尾に出てきた立体道路制度だ。この制度により、上下方向に長く伸びている立体”空間”である道路区域を、あらかじめ範囲を指定した立体区域として運用することができるようになった。

 つまり、立体道路制度が適用される道路の周辺については、制度によって指定された立体区域を犯さない限り、基本的には上下左右方向に何を建設しても良いのだ。たとえ、高架道路の上下左右が全てビルの構造物で覆われていたとしても……。

 結果的に、公団と末澤産業の交渉が滞っていたこの場所には、新設されたばかりの立体道路制度が適用されることとなった。このため、都市高速を建設したい公団とビルを建設したい末澤産業、両者の思惑が同時に実現可能になったのだ。こうして、梅田出入口の流出路とTKPゲートタワービル(完成当時の名称は「ゲートタワービル」)は双方とも1993(平成4)年に完成し、都市高速がビルを貫くという世にも珍しい光景が誕生したのだ。

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