大阪珍百景 梅田の「ビルをぶち抜く高速道路」はなぜ誕生したのか? 背景にある立体道路制度をひも解く
街づくりは、より立体的に
本記事では梅田出入口とTKPゲートタワービルの出来事を扱ったため、
「立体道路制度を利用するのは特殊な事例」
という印象を受けた人もいるかもしれない。だが、今日に至るまで、実は多くの場所で立体道路制度は適用されている。例えば、実用例としてしばしば挙げられるのが、東京にある虎ノ門ヒルズと環二通りの関係だ。
環二通りを赤坂方面から内回りに進むと、虎ノ門二丁目交差点を過ぎた直後に築地虎ノ門トンネルという地下トンネルに入る。一見するとただの地下トンネルのように見受けられるが、実は上下および進行方向左側(環二通り北側)は森ビルの建物に囲まれた構造になっている。つまり、地下にあるため分かりにくいものの、虎ノ門ヒルズの建物内を環二通りが貫いているのと同義なのだ。
立体道路制度はこの他にもさまざまな場所で適用されている。例えば、東京のバスタ新宿や大阪のりんくうタウンが挙げられるが、多くの人々にとって最も身近な適用例としては、鉄道駅の自由通路であろう。
鉄道駅の自由通路とは、改札内に入らずとも駅の反対側へ自由に行き来できる無料の通路のことであるが、実はこの自由通路の管理者は国や地方公共団体が管理する道路というケースが多い。自由通路においては、その道路を鉄道事業者管理下の駅舎がすっぽりと覆っていたり、自由通路直下に駅舎があったりするケースが多いが、この構造が実現しているのも立体道路制度のおかげなのだ。仮に立体道路制度が存在しなかった場合、自由通路の建設が認められず、多くの人々が不便な生活を強いられることになっていたことだろう。
街づくりが行われる、すなわち都市計画が策定される際には、どうしても平面で考えられるケースが多い。皆地図を眺めながら道路と建物の位置を決め、それらを平面上で隣接させて考えるからだ。
だが、現実世界は平面のような2次元ではなく、立体的な3次元だ。せっかく立体道路制度があるのだから、もっと道路と建造物を立体的に考える街づくりを考えても良いのではないだろうか。
例えば、新たに街をつくる場合、ひとつの街全体に立体道路制度を適用し、数々の建物が道路を覆ってしまえば、同じ規模でも街全体がコンパクトに収まる。こうすることにより、人々の横移動が減るだけではなく、街づくりのために切り開く範囲を狭くすることができ、土地の買収範囲の縮小や自然環境の破壊を抑制することにもつながる。もちろん、さまざまな不安要素もあるため一筋縄ではいかないことだろうが、そうした不安要素を加味した上でも、街づくりのアイデアだしの土俵には乗せるべきだ。
今まで誰も見たことがない、道路と建物が立体的に共存する新しい街づくり。立体道路制度を活用すれば、そんな未来の実現も決して不可能ではない。立体道路制度がフル活用された未来では、皆さんが持つ大都市のイメージはどのように変わるのだろうか。