「18時間も会社にいる」 中小運送社長の届かぬ悲鳴、ドライバー業界を悩ます「点呼問題」の闇とは

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バス運転手、トラックドライバーらによる悲惨な交通事故が後を絶たない。こういった事故を防ぐ砦となるのが、乗務の前後に行う点呼である。だが人手不足著しい業界において、点呼の実施は事業者の大きな負担となっている。

点呼制度が抱えるそもそもの問題点

 自動車運送事業のひとつである運送業界は、中小企業の巨大な集合体である。

 従業員数20人以下の会社は全体の71.6%。従業員数50人以下まで拡大すると90.7%を占める。逆に、従業員1001人以上の会社は0.1%。約6万2000社ある国内運送会社のうち、わずか68社しかない。

 遠隔点呼は、点呼を代行できる仲間(同じ会社や、グループ会社の他営業所)がいるから成立する仕組みである。つまり営業所がひとつしかないような中小の運送会社、バス会社、タクシー会社などでは成立しない。

「だってさ、ウチみたいな吹けば飛ぶような中小運送会社で、点呼のためだけに深夜帯に人を置く余裕なんてないぞ」と語る、先述の運送会社のように、人手不足がより深刻で点呼要員を用意できない可能性がより高いのは中小企業である。

 ところが遠隔点呼は、そもそもある程度の規模を備えた会社でないと実現できないという矛盾があるのだ。

 もうひとつ、より深刻な課題がある。事業者によって法令遵守意識に差があることだ。

 残念ながら、世にある運送会社、バス会社、タクシー会社などの中には、ルールに則った点呼を行っていない会社も存在する。

 例えばディスカウントストアで数千円で売っているアルコールチェッカーと、その日出勤するドライバー一覧を記した紙を営業所に用意しておき、ドライバーの自己申告で、「アルコールチェックOK、運転免許書携帯OK、健康状態OK……」のようにチェック(らしきもの)を実施するなど、本来のルールとは異なる方法で点呼記録を作成し、点呼を行っているという体裁を装っている会社もあるのだ。

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