「18時間も会社にいる」 中小運送社長の届かぬ悲鳴、ドライバー業界を悩ます「点呼問題」の闇とは
バス運転手、トラックドライバーらによる悲惨な交通事故が後を絶たない。こういった事故を防ぐ砦となるのが、乗務の前後に行う点呼である。だが人手不足著しい業界において、点呼の実施は事業者の大きな負担となっている。
苦肉の策、長時間労働を行う運送会社社長

「さすがにね、俺だって身体はキツイよ……」。知己の運送会社社長は、筆者にぼやいた。当たり前だ。何しろ、この社長は1日18時間近く会社にいるのだから。
運送会社の朝は早い。同社でも、トラックドライバーが出勤してくるのは2時から4時の間である。社長は乗務前点呼を行い、ドライバーたちを送り出す。ドライバーたちを送り出し終えた5時頃、社長はいったん帰宅する。再び出社するのは11時過ぎだ。
出社すると、社長は翌日の配車計画を作成し始める。ドライバーたちが帰社する16~17時頃までに配車計画立案を終えるのが理想だが、荷主の都合により配車が確定しないことも多い。
帰社したドライバーたちの乗務後点呼を行っていると、18時頃になってしまう。社長が経営者としての仕事を開始するのは、これからだ。身体がキツイときには応接室のソファーで仮眠を取ることもあるが、基本、社長はそのまま働き続け、ドライバーたちの出社を迎える。
この社長の場合は、ひとりで仕事を抱え過ぎなのも間違いない。だが、1日18時間も会社にいる状況については同情に値する。
「だってさ、ウチみたいな吹けば飛ぶような中小運送会社で、点呼のためだけに深夜帯に人を置く余裕なんてないぞ」。社長の嘆きは、厳しい中小運送会社の懐事情を端的に言い当てている。
残業規制の軛(くびき)から除外される経営者が人手不足の受け皿になり、長時間労働を強いられている、このような事例もあるのだ。