「18時間も会社にいる」 中小運送社長の届かぬ悲鳴、ドライバー業界を悩ます「点呼問題」の闇とは

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バス運転手、トラックドライバーらによる悲惨な交通事故が後を絶たない。こういった事故を防ぐ砦となるのが、乗務の前後に行う点呼である。だが人手不足著しい業界において、点呼の実施は事業者の大きな負担となっている。

打開策「遠隔点呼」制度の課題とは

 もちろん、自動車運送事業者を管轄する国土交通省も、点呼を行う上での現場の苦しみは分かっている。そこで考えられたのが、遠隔点呼制度(旧IT点呼)である。

 点呼は、大原則として対面で行うことが定められている。この背景には、対面でなければドライバーの不正──例えば、アルコールチェックを他人に代わってもらうなど──を防いだり、また顔色や立ち振舞などを確認し、健康状態に問題があるかどうかをチェックしたりすることが難しいからである。

 対面で点呼を行うためには、営業所ごとに点呼を行う人員が必要となる。対して、複数の営業所を持つ事業者において、営業所間を動画通話機能などを備えた専用機器で接続し、ひとつの営業所から複数営業所の点呼を行うのが、IT点呼制度である。

 IT点呼の導入によって、例えば深夜早朝の点呼においては、営業所Aにいる点呼担当者が、営業所B、営業所C……というように複数の営業所における点呼をまとめて担当することで、人員の削減を図ることができる。

 IT点呼は、2022年4月から遠隔点呼と名前を変えて運用されている。

 遠隔点呼は、以下三つの要件を満たすことを事業者が事前に申請し、承認を得ることができれば実施できる。

・使用する機器・システムが、遠隔点呼実施に必要な要件を満たしていること
・遠隔点呼を行う施設と場所が、指定された環境要件を満たしていること
・運用上の遵守事項を事業者が守ること

 例えば、使用するカメラについては、200万画素以上でフレームレートが30fps以上のスペックを満たすことが条件となっている。また、他人のなりすましを防ぐため、虹彩認証などの生体認証機能を備えていることが必須である。

 遠隔点呼を行う施設についても、照明が明るいこと、ドライバーの全身を記録できる監視カメラの設置に加え、点呼の途中で通信が途絶えないよう、適切な通信環境を備えることが求められる。

 その他にも必要とされる要件はあるが、制度開始初期のIT点呼に比べると、求められる要件は大きく緩和され、事業者が導入しやすいように遠隔点呼は進化している。

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