「現場の善意はもう限界だ」――猛暑・燃料高・中東情勢で露呈した、平時前提の物流の脆さ
猛暑・燃料高・人手不足・時間外規制が同時進行し、物流は「現場の無理」で支える構造が限界に到達。軽油1円=約167億円の負担や荷待ち1時間34分が示す通り、供給網は静かに機能不全へ向かう。
現場の善意に頼った調整構造

日本の物流がこれまで滞りなく回ってきた背景には、現場が幾多の不都合をその都度飲み込んできた実態がある。現場の乱れを人間がその場で整え、無理やりつなぎ合わせることで成り立ってきた側面が強い。
荷待ちが起きればドライバーが時間を削って待機し、前の工程が遅れれば現場が居残りで埋め合わせる。こうした働く人々の
「経験と善意」
による積み重ねによって、日本の供給網はかろうじて守られてきた。多重下請けの構造も、実態はリスクや負担を立場の弱い側へと押し付ける連鎖として働いていたに過ぎない。荷主側で解決しなかった費用や時間の制約を下流へ流し、待機や急な運行変更といった負荷を末端が引き受けることで、不備を表面化させずに済ませてきたのだ。
さらに物流拠点では、特売や急な物量変化、直前の時間変更に対しても柔軟に応えてきた。これは、現場の人間が
「無理をして帳尻を合わせた」
結果にほかならない。これまでの行き届いたサービスは、現場の人々が費用や時間を肩代わりすることで保たれてきた、持続困難な土台の上に積み上げられた危うい成功だったのである。