「1兆円」を削らなかった理由とは――HVで稼ぎ、知能へ賭ける資本再配分【短期連載】ホンダ「EV敗北論」という虚像(3)

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ホンダが上場以来初の4239億円赤字に沈んだ。だが、その実態は「EV敗戦」ではない。1.5兆円超の損失を一気に処理し、HVで稼ぎながらソフトウェアへ資本を集中する――知能化時代を見据えた大胆な再編が始まった。

知能化を本命とする資本の集中投下

ホンダ・ハイブリッドセダン・プロトタイプ(画像:本田技研工業)
ホンダ・ハイブリッドセダン・プロトタイプ(画像:本田技研工業)

 ホンダが打ち出した投資の割り振りで目を引くのは、全体の枠を一気に半分近くまで削ったことだ。興味深いのはその内訳である。EVへの投資を大幅に絞り込む一方で、ソフトウェアには1兆円という巨額の資金を投じ続ける。この数字のバランスこそが、ホンダの狙いがEVを数多く作ることそれ自体ではなく、知能化によって車の価値を高めることにある証拠だろう。

 いま、車という製品の価値がどこで決まるのか、その勢力図が塗り替わりつつある。かつてはエンジンの馬力や車体の堅牢さが主役だったが、現在はソフトウェアが競争の最前線に躍り出た。

 高度な運転支援システムや独自のOSによって磨かれた知能を、HVにも幅広く載せていく。目先の収益を守りながら、いずれ訪れる次世代EVの時代に欠かせない強みをあらかじめ鍛えておくわけだ。HVを売りながらソフトウェアを育てるという選択は、EV化を先送りにする後ろ向きな判断とはまるで中身が違う。

 ホンダにとって知能化こそが生き残りをかけた本命といえる。EV投資を切り詰めてでもソフトウェアへの投下を緩めない姿勢にその覚悟が読み取れる。HVを「過去の技術」として戻る場所と捉えるのではなく、最新の知能を実戦で試す舞台として使い倒す。

 220万台という次世代HVを情報を集める端末として走らせれば、EVが本格的に普及する頃には他社を引き離すレベルの高度な人工知能を手にしているはずだ。この流れを作り上げることこそが、先の見えない競争に勝つための足がかりとなるに違いない。

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