「1兆円」を削らなかった理由とは――HVで稼ぎ、知能へ賭ける資本再配分【短期連載】ホンダ「EV敗北論」という虚像(3)
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ホンダが上場以来初の4239億円赤字に沈んだ。だが、その実態は「EV敗戦」ではない。1.5兆円超の損失を一気に処理し、HVで稼ぎながらソフトウェアへ資本を集中する――知能化時代を見据えた大胆な再編が始まった。
市場の現実に即した投資配分の刷新

ホンダが発表した最新の経営計画を2025年版と照らし合わせると、野心的なEVシフトから市場の現実に即した路線へとかじを切った実態が見えてくる。
もともとホンダは、2040年までに四輪車の新車販売をすべてEVと燃料電池車(FCV)にする目標を掲げていた。しかし2025年を迎えた今、市場の伸び悩みを受け、2030年時点のEV販売比率は目標だった30%に届かない見通しとなっている。この逆風により、投入時期やカナダでの大規模な生産網整備といった計画を練り直す必要に迫られた。
一方で根強い需要があるHVについては、2027年以降に投入する次世代モデルを柱に据え、EV普及までの空白を埋める商品として強化する。2030年の四輪販売は360万台以上を見込み、そのうちHVで220万台を稼ぎ出す構えだ。
こうした流れを受け、2027年3月期からの5年間で描く資金の使い方も形を変えた。二輪事業の稼ぐ力とHVの販売増を背景に、12兆円以上の現金を創出する計画を立てている。2031年3月期までの投資配分では、電動化やソフト領域を前年度から3兆円減らし、3.5兆円に留めた。対照的に、HVへの投資はわずかながら上積みされている。
こうした投資の振りわけは、予測のつかない地政学リスクやインフラ整備の遅れを見越し、不透明な情勢でも身軽に動ける余力を守るためだろう。HVは目先の利益を得る道具に留まらない。将来のEVにも転用できる電子基盤を自らの収益で磨き上げる場所へと役割を変えたといえる。枠組みを整え直すことで、手元の資金を状況に合わせて効率よく投じる態勢が整いつつある。