「1兆円」を削らなかった理由とは――HVで稼ぎ、知能へ賭ける資本再配分【短期連載】ホンダ「EV敗北論」という虚像(3)

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ホンダが上場以来初の4239億円赤字に沈んだ。だが、その実態は「EV敗戦」ではない。1.5兆円超の損失を一気に処理し、HVで稼ぎながらソフトウェアへ資本を集中する――知能化時代を見据えた大胆な再編が始まった。

過去のしがらみを断つ戦略的清算

ホンダ・2026ビジネスアップデート(画像:本田技研工業)
ホンダ・2026ビジネスアップデート(画像:本田技研工業)

 ホンダが示した最新の報告で目にとまるのは、EVにまつわる損失を差し引けば、四輪事業そのものは黒字を保っているという点だ。この巨額損失についても借金に頼らず手元の現金でまかなうといい切っている。つまり今回の赤字は、車が売れずに立ち行かなくなった末の窮地ではないということだ。

 これからの3年間で経営資源の配分を改め、外部の力も借りながら、ものづくりの土台を徹底的に鍛え直す構えだ。その後、強まった体質を頼りに新車を送り出し、成長軌道に戻していく。2029年3月期には好調な二輪や金融事業の伸びも合わせ、過去最高水準となる1.4兆円以上の営業利益を見据えている。四輪の黒字化と二輪事業の並外れた稼ぐ力によって、EV損失分を除けば7兆円を上回る利益を積み上げ、負債はすべて手元の現金で片付けるつもりだろう。

 2026年3月期に計上したEV関連損失1兆5778億円のうち、1.3兆円あまりは戦略の切り替えによって積み増されたものだ。これこそが高い授業料の本質といえる。過去に進めてきた投資や工場などの固定資産、将来の回収が難しくなった資産を一気に整理した。初期の戦略にあった見通しの甘さや古いやり方を断ち切るための苦渋の決断だったはずだ。

 二輪事業が生み出す潤沢な利益を四輪の過去を清算するために投じる。圧倒的な収益源を持つホンダだからこそ選べた、大胆な資金の移し替えといえるだろう。

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