「1兆円」を削らなかった理由とは――HVで稼ぎ、知能へ賭ける資本再配分【短期連載】ホンダ「EV敗北論」という虚像(3)
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ホンダが上場以来初の4239億円赤字に沈んだ。だが、その実態は「EV敗戦」ではない。1.5兆円超の損失を一気に処理し、HVで稼ぎながらソフトウェアへ資本を集中する――知能化時代を見据えた大胆な再編が始まった。
短期決戦による四輪事業の足腰強化
市場をとりまく環境はその後、さらに激しさを増した。2025年5月に始まった米政府の関税政策や同年9月末のEV税控除の打ち切りが重なり、EV市場の伸び悩みは予想を超える速さで進んでいく。ホンダはこうした事態を受け、投資先の仕わけをより厳しく行うことに決めた。
現金を稼ぎ出す目標も、長期の見通しから2027年3月期からの3年間で6.2兆円を積み上げる短期決戦の構えへと移っている。四輪事業の足腰を徹底的に鍛える姿勢がうかがえる。2029年3月期までの3年間では、エンジン車とHVに4.4兆円を振り向ける一方で、EV投資は0.8兆円、ソフトウェアへの投資は1兆円まで絞り込んだ。カナダで進めていたEV関連の大規模投資も、無期限の凍結が決まっている。
こうした動きを世間は戦略の挫折だと口にするが、実態は少し違う。HVに重きを置くのは、収益を守りながら次世代を支える土台を広めるための現実的な選択だろう。これまでの技術を詰め込んだ車でしっかり稼ぎつつ、そこで得た資金を将来の強みへとつなげていく。並んだ数字の背後にあるのは、限られた経営資源をどこに残し、何を捨てるかを見極めた意思決定の跡だ。