「1兆円」を削らなかった理由とは――HVで稼ぎ、知能へ賭ける資本再配分【短期連載】ホンダ「EV敗北論」という虚像(3)
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ホンダが上場以来初の4239億円赤字に沈んだ。だが、その実態は「EV敗戦」ではない。1.5兆円超の損失を一気に処理し、HVで稼ぎながらソフトウェアへ資本を集中する――知能化時代を見据えた大胆な再編が始まった。
需要変動を乗り切る機動的な経営
EV市場が幕を開けたころ、多くのメーカーは市場を奪うことこそが勝ち残るための答えだと信じて疑わなかった。巨額の資金が開発へ投じられたが、今その前提が変わりつつある。地域ごとの事情やインフラの整備状況によって、世界が思い描いたほどEV一色には染まらなかったからだ。
北米では大型のピックアップトラックやスポーツタイプ多目的車(SUV)が相変わらず支持を集め、HVへの需要も底堅い。一方で中国では地元のメーカーが激しい価格競争を仕掛け、安いEVが市場を覆い尽くしている。欧州に目を向ければ、補助金の打ち切りが普及の勢いに水を差す。
こうした波に対し、ホンダは北米での新興勢との争いや中国での苦戦を正面から受け止め、四輪事業で利益を出すための手を打った。EV専用にするはずだった生産ラインをHV向けに振り向け、確実に売れる車で利益を積み上げていく。工場の稼働率を保つために安売りの泥沼に踏み込むのではなく、売れ行きの変化に合わせて動く経営へ切り替えたわけだ。
先が見えない局面を乗り切るしなやかさを持ち、稼ぐための事業と未来を拓くための投資を切りわける態勢を固めたといえるだろう。