「これ、もう限界じゃないですか?」 食品値上げ減速の裏で進む「物流費要因73.6%」の圧力――供給網に蓄積する静かな危機とは
食品値上げは70品目と4か月ぶりの低水準に減速したが、累計6290品目はなお高水準。前年比6割減の裏で、物流費73.6%・包装資材69.9%が示す構造的コスト圧力は解消していない。
表面上の減速と積み上がるコストの重圧

2026年4月30日に発表された帝国データバンクの「食品主要195社」価格改定動向調査をひも解くと、2026年5月の飲食料品値上げは70品目にとどまった。単月で100品目を下回るのは4か月ぶりのことだ。1月から9月までの累計で見ても6290品目。前年同時期が1万4409品目だったことを考えれば、数字の上では約6割減という大幅なペースダウンに見えるだろう。だが、この表面的な数字だけで価格高騰の波が去ったと考えるのは早計だ。
実態はむしろ、深刻さを増している。1回あたりの平均値上げ率は約15%と、前年と同水準の極めて高い数字が続く。改定の回数こそ減っているが、一度に上乗せされる負担の重さは変わっていない。値上げの中身を見れば、その背景はさらに重い。原材料高の影響は過去最高の99.6%に達しており、ほぼ全ての改定に関わっている。それだけではない。「包装・資材」が69.9%、「物流費」も73.6%と、供給網を支える基礎的な費用が揃って高い水準で止まったままだ。
特に、包装資材のコスト増が進む速度は目覚ましい。中東情勢の緊迫に伴うナフサの供給不足は、製品を包んで出荷するという物流の当たり前を根本から脅かしている。現場の効率化だけで吸収できる範囲をすでに超えており、その負荷が輸送網全体をじわりと圧迫し続けている。
今の値上げ件数の減少は、コストが下がったからではない。消費者の離反を恐れる企業が、自らの身を削りながら、限界まで改定を先延ばしにしている。今、起きているのは嵐の前の停滞であり、水面下では解消されないコストが静かに積み上がっている。