「中国勢がシェア9割」 インドネシアEV市場、10万台到達──人口大国インドネシアがマレーシアに敗れる“新市場序列”の衝撃
東南アジア市場の販売拡大

英Verdict社が運営するJust Autoの集計によれば、2025年の東南アジアにおける乗用車市場は、前年比で4%増となる325万台に達したという。ここで注目すべきは、長らくこの地域の中心だったインドネシアが、初めて首位から滑り落ちたことだ。
マレーシアは4年続けて過去最高を塗り替え、82.6万台を記録した。一方で、インドネシアは75万台にとどまっている。これに続くのは、タイの61.2万台、ベトナムの56.4万台、フィリピンの48.9万台だ。これまで「人口こそが市場の力」と見られてきた勢力図に、明らかな地殻変動が起きている。
こうした逆転劇を読み解くヒントは、世界銀行が示す数字に隠されている。マレーシアの人口は3500万人。インドネシアの2.8億人やタイの7000万人と比べれば、その規模は驚くほど小さい。
しかし、人々の懐具合に目を向けると、景色は一変する。マレーシアのひとりあたり総所得は1万1650ドル(約186万円)にまで伸びており、インドネシアの2.4倍、タイの1.6倍という水準にある。インドネシアは膨大な人口を抱えつつも、所得の低さが消費の伸びを力強く抑え込んでしまっている。対するマレーシアでは、底上げされた所得がそのまま新車への意欲に結びついた。市場の成熟を測る尺度が、人口から個人の購買力へと移り変わったといえるだろう。
もっとも、バッテリー式電気自動車(BEV)の領域に目を転じれば、また異なる様相が見えてくる。2025年のBEV販売ではベトナムが17.5万台でトップに立ち、タイが12.2万台、インドネシアが10.6万台と続く。マレーシアは3.5万台、フィリピンは1.7万台と、こちらではまだ足踏み状態にある。
なかでもインドネシアの伸びは、どこか不自然なほどの勢いを感じさせる。2020年にはほぼゼロだった市場が、わずか4年で
「10万台」
の大台を突破した。だが、これをそのまま「現地の需要が花開いた」と受け取るのは早計かもしれない。既存のエンジン車市場が行き詰まるなかで、中国メーカーが供給を急激に増やした側面が強く、自律的な広がりというよりは、外圧によって作られた市場という印象が拭えないからだ。
こうした流れのなかで、SNS上ではある極端な予測が耳目を集めている。数理モデルを根拠に
「インドネシアのBEV比率が1年11か月後に80%超に達する」
というものだ。この試算によれば、2027年には58.3%、2028年には89.4%という、にわかには信じがたい数字が並ぶ。
しかし、現実はそう単純ではないはずだ。
・所得の制約
・心許ない充電網の整備状況
といった足元の課題を見れば、こうした予測は実態から大きく浮き上がっているように思える。数式上の計算が、生身の人間が暮らす社会の条件をどこまで拾えているのか。市場の動きを追う際には、こうした極端な見通しに惑わされない冷静さが必要になるだろう。