「中国勢がシェア9割」 インドネシアEV市場、10万台到達──人口大国インドネシアがマレーシアに敗れる“新市場序列”の衝撃
EV振興と国家戦略

インドネシア政府が描く電気自動車(EV)への道筋は、極めて野心的だ。2030年までに、BEVやハイブリッド車(HV)といった低排出車(LCEV)の国内生産を60万台に引き上げ、2035年には100万台の大台に乗せるという。さらにその先、2050年には国内で売られる四輪車のすべてをEVに置き換えるという、息の長い構想を掲げている。
この壮大な目標を支えるのは、周到に用意された優遇策だ。国内での生産を条件に、
・付加価値税(VAT)の減免
・輸入関税の免除
を打ち出し、外資による投資を強く促している。自国を消費地としてだけではなく、製造の拠点として選ばせるための環境作りを、国を挙げて推し進めている形だ。
こうした政策の根底に流れているのは、自国の資源を最大限に使い切ろうとする計算だろう。世界有数の埋蔵量を誇るニッケルの未加工鉱石を輸出禁止に踏み切ったのは、その象徴的な一手といえる。外資企業に対し、資源が欲しければ国内で投資を行い、国内で物を作れと事実上の決断を迫っているのだ。
その思惑は、着実に実を結びつつある。韓国の現代自動車とLGの連合、中国のCATL、そして現地の企業が手を取り合い、電池生産の巨大な計画が動き出した。採掘から電池製造、そして最終的な車両の組み立てまでを一国内で完結させる仕組みは、かつて石油によって国際的な地位を高めた資源国の姿とも重なって見える。
だが、この戦略がそのままバラ色の未来に繋がるかどうかは、まだわからない。大きな懸念として残るのが、この国の電力が石炭火力に深く依存している現実だ。走行中に排気ガスを出さないBEVであっても、その製造工程や、日々の充電に使われる電気が石炭由来であれば、二酸化炭素の排出という影は色濃く残る。
こうした電力構成の歪みは、将来的に輸出先で課されるであろう炭素に関する規制を前に、弱みとなりかねない。資源の優位性を盾に呼び込んだ産業が、果たして持続的な競争力を守り抜けるのか。政府が描く青写真の真価が問われるのは、これからだ。