「中国勢がシェア9割」 インドネシアEV市場、10万台到達──人口大国インドネシアがマレーシアに敗れる“新市場序列”の衝撃
国民車EV構想の始動

インドネシア政府が、自国の名を冠したEV「i2C」の実現に向けて動き出している。2028年初頭の生産開始を目標に掲げるこの構想は、輸入への依存を断ち切り、自らの手で車を造り上げるという
「自立」
への強い意志が透けて見える。目指す価格は3億ルピー(約282万円)以下。これを広く行き渡らせることで、大衆車市場の主役に据える腹づもりだ。
思えば、国産化への挑戦はこれが初めてではない。1990年代には韓国の起亜自動車を土台にした計画が持ち上がり、2019年にはピックアップトラックを掲げた「エセムカ(Esemka)」プロジェクトが始動した。しかし、いずれも資金の壁や支援の薄さに阻まれ、期待されたほどの成果を残すことはできなかった。今回のi2Cは、その轍を踏むまいとするかのように、2025年7月の国際モーターショーでイタリアの名門イタルデザインと組んだ試作車を披露するなど、これまでにない規模感で進んでいる。
もっとも、華やかな外装の開発を外部に頼ることはできても、車の動きを司る制御システムやソフトウェアを自国の技術として昇華できるかは、依然として不透明だ。見た目の「国産」を整えるだけにとどまってしまえば、真の意味での産業の自律は遠のく。さらに、3億ルピーという価格設定も、市場の現実を見れば楽観はできない。国内で最も層が厚い2億ルピー以下の購買層からすれば、それはまだ
「高嶺の花」
であり、採算を保つための販売量を守り抜けるかという課題も突きつけられている。
この動きに対し、現地調達率80%を掲げる現代自動車や、トヨタ、奇瑞汽車といった外資勢も協力の構えを見せている。ただ、こうした姿勢は純粋な支援というよりも、政府との繋がりを保ち、自らの市場での立ち位置を守るための外交的な振る舞いという側面が強いだろう。国産という看板を掲げながら、その中身がどこまで外資の力に寄りかかり続けるのか。構想が描く未来図には、まだ幾つもの霧が立ち込めている。