「中国勢がシェア9割」 インドネシアEV市場、10万台到達──人口大国インドネシアがマレーシアに敗れる“新市場序列”の衝撃

キーワード :
, , , ,
2025年の東南アジア乗用車市場は325万台(前年比+4%)と拡大する一方、マレーシア82.6万台が首位に立ち、インドネシア75万台は初めて首位から転落。BEV急伸が勢力図を揺らす。市場構造の転換が進む。

人口大国の成長期待

インドネシアEV市場の課題。
インドネシアEV市場の課題。

 世界第4位、2.8億人という膨大な人口を抱えるインドネシア。その数字が物語る潜在力は、周辺諸国を圧倒している。都市化が進み、人々の移動が活発になるなかで、EVが普及していくための土台は、一見すると整いつつあるように見える。

 しかし、その見通しを額面通りに受け取るわけにはいかない。この国の新車市場を支えるはずの中間層が、今、明らかに細り始めているからだ。2019年には5730万人(人口の21.5%)を数えたこの層は、2024年には4790万人(同17.1%)へと落ち込んだ。市場の屋台骨そのものが揺らいでいる現実は、無視できない。

 課題を数え上げればきりがない。充電インフラの整備はようやく端緒についたばかりで、電力供給の安定性や地域ごとの格差も依然として大きい。個人の稼ぎに見合わないほど高い車両価格を、いつまでも国の補助金で支え続けることも、財政の面から見て現実的ではないだろう。インフラの遅れと、人々の購買力の限界。このふたつの制約が重なり、成長の道筋にははっきりとした限界が顔をのぞかせている。

 こうした状況下で、今後2年足らずのうちにBEV比率が80%を超えるという予測は、あまりに実態から浮き上がっている。市場の体力や所得の伸び悩み、供給体制の未成熟さを踏まえれば、短期間でそこまで景色が変わるとは考えにくい。これまで世に出されてきた強気の予測の多くは、実体をともなわない数字だけがひとり歩きしている感が否めない。

 それでも、インドネシアが長い年月をかけてEVの要衝へと姿を変えていく可能性は、まだ潰えたわけではない。豊かな資源と、そこへ流れ込む中国資本による投資が、この国を東南アジアの供給拠点へと押し上げる原動力となっている。それは同時に、長く続いてきた日本メーカー中心の構図が塗り替えられる動きでもある。インドネシアはもはや、ただ売るためだけの場所ではない。世界の生産網の重要な一角を担い、地域の勢力関係を揺さぶる存在になろうとしている。

全てのコメントを見る