路線バスを「点検車」にする逆転の発想!――ガス漏えい事故リスクの“監視の空白”を埋める新手法とは

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路線バスを活用したガス管監視は、見回りの空白を埋める発想から生まれた。AIカメラ搭載のバスが2024年度に「連絡なし他工事」の発見数を約2倍に増やし、対象路線の7割で巡回不要を実現。2025年11月、関西三都で110台規模へ拡大した取り組みは、バス事業の新たな収益源と公共インフラ維持の両立を示している。

AI車載カメラと見回りの効率化

「第5回インフラメンテナンス大賞」で特別賞に輝いた(画像:経済産業省)
「第5回インフラメンテナンス大賞」で特別賞に輝いた(画像:経済産業省)

 大阪ガスネットワークが進めるこの事業は、2022年1月に政府が主催した「第5回インフラメンテナンス大賞」で特別賞に輝いている。経済産業省の資料をひも解くと、その画期的な中身が浮かび上がってくる。

「大阪ガスは各配管工事業者が道路を掘削する際に、ガス管を破損しないよう事前の工事協議を求めているが、同社に届け出なく工事が行われるケースがある。このため、圧力が高いガス管が埋設されている路線については、破損時の社会的影響が大きいため、届け出のない工事を発見するための車両パトロールを行っている。本取組では、路線バスに搭載する工事現場が判別可能なAIカメラを開発した。これにより現状の対象路線の約7割について、車両パトロールが不要となり、事務所にいながら届け出のない工事の把握が可能となった」(「工事現場をAIで自動認識する車載カメラ」によるガス管パトロールの効率化 8ページ、総務省)。

「現状の対象路線の約7割について、車両パトロールが不要」という数字が政府資料に明記されている点は重い。内容が過大に語られているとは考えにくく、見回りの手間が大幅に削ぎ落とされた事実は、維持に苦しむバス業界にとっても無視できない福音だ。これはバスが移動手段を越え、都市の安全を根底で支えるインフラとして、公的な位置づけを得つつあることを物語っている。

 国が旗を振るガス事業のデジタル化の波において、京都市バスと大阪ガスネットワークの連携が持つ意味は小さくない。日本ガス協会の資料でも車載型AIカメラの有用性が説かれており、今後はドローン活用など、他の技術との比較検討も加速するだろう。

 こうした異業種との手を取り合う動きは、路線の存続を議論する場においても、「インフラを守る」という大義名分のもと、公的な支援や予算を引き出す力強い根拠となり得るだろう。

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