12駅が一気に消滅! ジリ貧「宗谷本線」に今春、あえて新駅が設置されたワケ

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2022年3月、JR北海道・宗谷本線に「名寄高校駅」が誕生した。存廃議論に揺れるローカル線にあって、新駅の開業が実現した背景には何があったのか。

地域で支えるローカル線の光明

 2021年4月のJR北海道のプレスリリース「東風連駅の移設及び駅目の改称について」より(画像:JR北海道)
2021年4月のJR北海道のプレスリリース「東風連駅の移設及び駅目の改称について」より(画像:JR北海道)

 それが具体化したのは、名寄市が2020年度当初予算案に、「(仮称)名寄高校駅設置事業」として、約1370万円を計上したことだった。

 その時の説明資料には、「名寄高校生の利用が多い東風連駅を名寄高校前に移設し、通学の利便性及び名寄高校の魅力向上を目指します」とある。当時の調査によると、平日の乗車人員は23人ほどで、ほとんどが通学利用者とみられていた。

 鉄道の駅から高校まで、1~2km程度離れているのは、珍しくない。高校生の足ならば20分程度だ。しかし、冬の北海道となれば、事情は変わってくる。名寄は道内でも寒さと雪で知られ、いくら若者とはいえ、厳しい「通学路」だった。

 駅を高校近くに移設すれば、既存の東風連駅周辺の住民には、かえって不便になってしまう問題もあった。しかし、利用者のほとんどが通学生であったため、住民の合意も得られたという。

 高校生以外に鉄道を利用する人がごくわずかだった、という現実は厳しいものの、若い世代とローカル線を、地域全体で支える形が出来上がった。