なぜ地方の施設は「クルマでしか行けない場所」にできるのか?―――「免許がない人 = 客ではない」ということ? 東京都民が知らない地方の現実とは

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地方の大型施設は、広大な駐車場と車での来場を前提に立地を決める。2026年の国内旅行消費16兆円を前に、効率と収益を優先する現実が、鉄道利用者やインバウンドを市場から遠ざけている。

地方観光の構造的ジレンマ

地方イメージ(画像:写真AC)
地方イメージ(画像:写真AC)

 郊外という場所は、経営の面では理にかなっている。だが、その裏側には見過ごせない矛盾もある。

 まず、インバウンドとの相性が良くない。2026年のインバウンド数は4140万人(前年比97.2%)と予測されるが(同)、その多くは鉄道と徒歩を組み合わせて移動する。車でしか行けない施設は、こうした需要の多くを取りこぼす構造になっている。拡大するインバウンド市場の潜在力を、自ら制限してしまう形だ。

「鉄道は効率が悪い。人口が増えないと成り立たない」

という意見もあった。確かに、利用者が減る地域では鉄道を維持すること自体が難しい。しかし、その事情があるほど、鉄道を頼りに旅をするインバウンドとの距離は広がりやすい。

 もうひとつ気になるのは、若い世代との関係だ。都市部では免許を持たない若者が増えている。車を前提とした施設ばかりが増えれば、彼らが訪れるきっかけは減る。長期的には、市場の縮小につながりかねない。

 地域によっては歩み寄りの動きもある。駅前にレンタカー店を置いたり、電気自動車(EV)を貸し出したりする取り組みだ。だが現場の声は厳しい。「レンタカーは夕方に閉まる」「EVは目的地に着く前に電池が切れた」。移動手段は十分とはいえない。

 さらに、郊外施設の集中は地域の公共交通にも影響を及ぼす。駅前通りの人通りは減り、周囲の店も元気を失う。鉄道利用者が減れば本数はさらに減り、交通そのものが細くなる。

 目先の収益を優先した結果、地域の移動の土台が弱まる。効率を追うほど、車を持たない人は市場の外へ押し出される。

「車の社会ができあがっている以上、その上で動くしかない」

現実はそうかもしれない。だが、その背景には、車を持たない人を切り離さざるを得ない事情が潜んでいる。

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