「50cc原付」消滅が直撃――フードデリバリーを襲う“ラストワンマイル危機”
低コスト配送モデルの揺らぎ

低コストの移動手段だった50cc原付が姿を消すことは、配送サービスの維持費を押し上げる要因になっている。これまでフードデリバリーや宅配の仕事は、50cc原付の安い車両価格と維持費の低さを前提に成り立ってきた。車両は20万円前後で調達でき、燃費も良い。タイヤや消耗品も安く済む。1件あたり数百円ほどの利益を積み上げる配送ビジネスにとって、この条件は欠かせなかった。
ところが新しい基準の原付へ移ると、車両価格は10万円以上上がる。10台ほどを使う小さな事業者でも、更新の時に100万円近い追加投資が必要になる。こうした負担の増大は、事業を続けられるかどうかにまで影響する。
問題は車両の購入価格だけではない。車体が大きくなれば、タイヤ代や部品の価格、修理の工賃も上がる。日々の運用費は全体として膨らんでいく。50cc原付の部品供給が減れば、古い車両を使い続けるための整備費も高くなる。結果として、高額な新車への入れ替えを前倒しせざるを得なくなる。
こうして積み重なるコストを、利益率の低いデリバリー事業者が内部の努力だけで吸収する余地はほとんどない。負担が限界に近づけば、その分は配送料の値上げとして消費者に回る。
都市では「数百円で料理が届く」サービスが日常になっている。この利便性は、安い移動手段が土台にあってこそ成り立っていた。とくに高齢化が進む地域では、フードデリバリーやネットスーパーが生活を支える役割を持ち始めている。配送費が上がれば、利用を続けにくくなる人も出てくる。生活の質の差が広がるおそれもある。
新しい基準の原付には環境面での利点がある。一方で、物流の末端を支えてきた安価な仕組みに影響を与える面も見逃せない。50cc原付の終わりは、これまで続いてきた低コスト配送の仕組みが、物理的な限界に近づいていることを示している。